白鍵の黒ずみ 見た目も良くないので、何とかなりますか?

ヤマハC3Aの白鍵の黒ずみを落として欲しいとご依頼頂きました。製造番号からしてヤマハのニューアイボリーのモデルだと思います。先ずはペーパーで水研ぎの下処理をしてみました。番手はあまり荒い番手は使うのが怖いので#800位から始めてみました。

象牙の場合は研ぎの後に漂白で鍵盤を白くしますが、こちらのニューアイボリーは漂白は出来そうもないので、ペーパーの水研ぎで番手を上げて手作業で黒ずみを落とし込んで行きます。4KEYの下処理で1時間経過しました。これは長丁場になりそうです。

NO45から上の白鍵全てを下処理しましたが、元々黒ずんでいた鍵盤は微妙に汚れが落ち切っていないようです。気になる鍵盤を拾って再度ペーパーを当てます。かれこれ4時間が経過しました。

高音部側の鍵盤の下処理を終えて、小休止の後低音部側の下処理を始めました。一応高音部の処理の終わった鍵盤と低音部側の未処理の鍵盤を並べてみると、その違いは一目瞭然です。しかし目を凝らして見ると、鍵盤の先端部分や付け根の部分の変色が落としきれていません。

そこで再度ペーパーでの水研ぎをして、出来るだけ汚れを落としておきます。この下処理作業の出来如何によって仕上がりのレベルが大きく違って来ます。全ての白鍵の下処理を終えるのに8時間かかりました。次は明日、再度チェックをして汚れの残っている鍵盤はもう一度ペーパーで水研ぎして、その後バフ研磨をして仕上げて行きます。

1日置いて状態を見ましたが、やはり良く見ると黒ずみが残っていたので、再度ペーパーを当てました。しかしあまり研ぎすぎると鍵盤のチリ等が薄くなって強度が落ちたり鍵盤の高さに影響を与えるので慎重に出来る範囲で落とします。

下処理を終えた鍵盤をバフ研磨で仕上げて行きました。せっかくなので白鍵、黒鍵だけでなく、キャプスタンの頭も磨いておきました。黒ずみは低音部側の方が濃くて落としにくかったです。理由を考えると低音部側は指先と言うよりも指の腹で鍵盤をタッチする事が多く、指の汚れが鍵盤に移りやすいと言うのが原因ではないかと考えます。午前中で鍵盤半分を終えて、午後に残りの鍵盤の仕上げを行って行きます。

2023.08.10丸2日かけて鍵盤の黒ずみを落として仕上げた鍵盤を戻しに伺いました。せっかくなのでバランスピン、フロントピンの磨き込みも行う事にしました。バランスピンは鍵盤がギッタンバッコンする中心のピンですので、出来るだけ抵抗が少ない方がタッチが滑らかになります。その為パンチングを取り外してピンの磨き込みをします。

同様にフロントピンもパンチングを取り外して作業しました。地道な作業ですが、これから先のピアノのタッチに影響を与えます。

鍵盤筬も掃除機できれいにお掃除をしました。ここまでの作業で約2時間半が経過です。

いよいよお預かりしていた鍵盤をセットします。

アクションも乗せてから微調整をして作業完了。後は慎重に鍵盤を本体に戻します。

これにて一件落着!丸3日間の作業でした。
おしまい