ヤマハ CP60M 中古 オーバーホール 修理

ビンテージキーボードのメンテナンス

ヤマハ エレクトリック ピアノ CP60Mの修理をご依頼頂きました。

ライブでの使用も多かったようで、内外装共に傷みが激しいです。

修理と言うよりも、オーバーホールと言った方が良い状態です。

こういった類の修理、メンテナンスをする所は殆ど有りません。

お陰様で、当社へのお問い合わせ、ご依頼は増えています。

修理、販売に関するお問い合わせはお気軽にこちらからどうぞ℡ 0120-045-845
またはbzq21747@gmail.comにメールで問い合わせてください。
ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
〒243-0804 神奈川県厚木市関口466‐1

1.修理費用算出の為の下見作業

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取りあえず修理見積り作成の為下見作業を行います。

汚れだけではなく、外装が傷んでいる場合、内部も傷んでいる事が多いです。

それは、外装の傷みは使用頻度に比例する場合が多く、

つまるところ内部の部品の消耗も進んで、全体が傷んでいる場合が多いのです。

この下見作業が修理費用を算出するのに大事な作業となります。

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パッと見ただけでも内外装共、かなり傷んでいて、簡単な修理では無いのが分かります。

ピアノ等の鍵盤楽器は、指の感覚で音作りをするので、パッと見が整然ときれいにそろってなければなりません。

何故なら、全ての鍵盤がきれいにそろっていないと、思い通りにちゃんとした音が出せないからです。

機能美と言う言葉が有りますが、まさにピアノの内部は部品が整然と並んだ美しさが有ります。

美しい音色を奏でるには、美しい機能美が大切なのです。5492F571-7F31-4174-B85F-6487E94D38F9.jpeg

これだけ全体がガタガタになっている原因は、一つの部品の不具合だけでは有りません。

ピアノは鍵盤からのエネルギーをハンマーまで効率よく伝える為に、数多くのパーツがそれぞれ機能し合っています。

それはまるでからくり人形やホールクロックのような複雑な動きを寸分の狂いもなく行うものです。

先ずは音を出すまでに必要な作業内容をピックアップして行きます。

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ピアノ全体を俯瞰した後は、各部のパーツの状況を見て行きます。

ピアノは個々の部品がその役割を果たす為に、寸法や基準値が決められています。

ピアノ全体の構成は個々の部品の複合体で出来上がっていますので、なるべく細かく部品の一つ一つのチェックをしていきます。

部品のへたり、摩耗、欠損、経年劣化等をチェックして、全体の調整作業内容を検討していきます。

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傷んでいる事はすぐに分かりますが、これを新品に近い状態まで戻すために、どこをどうやって修理し、その費用がどの位かかるのかを算出する必要が有ります。

全てを新品に変えてしまえば楽ですが、そうすると費用が莫大になってしまいます。

生かせるところはそのままに、不具合を起こしそうな所はしっかりと治す。

これがアナログ楽器の修理、メンテナンスの醍醐味です。

デジタル楽器の修理は修理と言うよりはパーツ交換になってしまいます。

しかしアナログ楽器は部品一つの交換や、調整で元通りになることが有ります。

その違いは技術者の経験や知識、センスが物を言う前時代的な人間味と言えます。

2.修理作業開始

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先ずは鍵盤が水平になる様に、水準器を当てて水平を出します。

CP60Mの場合、この水平を決める作業は全ての作業の原点となります。

水平を出す事で、鍵盤の位置が決まり、それに合わせてアクションの位置が決まるからです。

一般のピアノの場合は鍵盤が乗ってる棚板と言う部分が固定されていますので、

こう言った位置出しという作業は有りません。

鍵盤を格納出来る機能を持つCP60Mの特徴で有ると同時に、調整の難しさを痛感する場所でも有ります。

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今回は水平を保つ為に、両サイドの突き上げ棒を自作のオリジナル品に交換しました。

何故なら元々ついている突き上げ棒は可変範囲が狭く、経年による各部の寸法の変化により

長さが足りなくなって来るからです。

人間も年齢と共に、身長が縮んだり、おばあちゃんが小さくなったりします。

それを補正するために、可動範囲を広く出来る仕組みになっています。

ただ、制作した在庫が今回で最後となってしまいましたので、今後は元々のパーツをアレンジして使うしかありません。

3.鍵盤修理

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水平を出したら次の作業開始です。

メンテナンスの段取りで、先ずは鍵盤から始める事にしました。

白鍵は剥がれや欠け、黒鍵の色抜け等、なかなかな状態です。

また、タバコの焼け焦げ痕があったり、汚れも激しくて、一鍵一鍵毎に掃除とチェックをします。

何故タバコの焼け焦げ痕が有るのかと言えば、ライブでお酒を飲みながらタバコをふかし、

灰皿がないので、何か小さなお皿を灰皿代わりにしていて、演奏に夢中になってタバコが鍵盤に落ちた、

そんな映像が浮かんで来ます。

タバコの焦げがあると、大体鍵盤の下にコーラやコーヒーをこぼした跡が有ります。

ですからタバコの痕を見つけたら鍵盤の下の状態を念入りにチェックします。

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以前に修理した痕も有りましたので、不良鍵盤は貼り替えて、

木場(鍵盤の横の部分)の汚れも落とし、黒鍵も色抜け補正した後、バフ研磨して調整します。

鍵盤はピアノを演奏する際に演奏者の感性をピアノ本体に伝えるためのINTERFACEですので、

見た目も実際の動きも大切なので、念入りな作業となります。

おうちでも古くなってガタぴしゃしたドアを修理して、指一本でスムーズに動くようになると気持ちも変わるものです。

特にピアノと言う楽器は全体が美しく、鍵盤もスムーズに動いて、

自分の思い通りの音色を出せると、演奏者も心置きなく演奏出来て、それがお客様の感動につながります。

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4.アクション修理

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次にピアノを弾く時、タッチに違和感が有ったので、アクションも清掃した後、各部のチェックをしました。

すると、ウィペンヒールクロスが一部交換されており、尚且つ厚さが違っていたので、これがタッチの違和感の原因でした。

こちらもパーツ交換することにしました。

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ピアノのアクションは擦れたり、突き上げられたりする部分が多く、固いもの同士が当たると雑音が出たりカチカチと言った異音が発生してしまいます。

そのためにフェルトやクロスを使って、雑音や異音の発生を防いでいます。

しかしフェルトやクロスは長い間使うと擦り減って、経年劣化します。

ですからピアノにとってフェルトやクロス、スキンと言ったパーツ素材は消耗品となります。

こちらのアクションのウィペンヒールクロスはへたっていたり、交換されているものが有ったりで不揃いでしたので、すべて交換しました。

既存のパーツと規格が違うため、部品を一個一個手作業でカットして作りました。

アクションのウィペンヒールクロスの張り替え作業は結構地道な作業です。

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次は鍵盤ブッシングの交換です。

以前どちらかで交換した跡がありましたが、しかしこれはブッシングではなく、スキンのようです。

おまけに厚さも基準の寸法と違っていました。

これでは思い通りの鍵盤タッチが得られません。

どうも緊急修理だったのか、その場しのぎのやっつけ仕事の様でしたので、こちらはちゃんとしたブッシングに張り替えます。

5.鍵盤ブッシング交換

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先ずは、今くっついているブッシングを剥がして行きます。

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古いブッシングをすべて剥がし終わったら、新しいブッシングクロスを切り分けて貼り直して行きます。

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これで鍵盤ブッシングとウィペンヒールクロスの全張り替えが終わりました。

割れのあった鍵盤も張替え、バフ研磨してから鍵盤調整もしましたので

タッチ感が格段に上がりました。

ガタぴしゃで力を入れないと動かない引き戸が、スムーズに指一本で動くような感覚です。

ピアノを弾く時に、思い通りに弾けなくて我慢しながら演奏するほどストレスのたまる事は有りません。

これで気持よく演奏して貰えるでしょう。

続いてアクションと鍵盤を本体に取り付けて調整を行います。

6.鍵盤整調

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再度水準器を使って平行を出してから、改めて調整を行います。

たな板(鍵盤を乗せている台)を水平までもって来ると、各部のバランスが取れず苦労します。

全体のバランスが取れる微妙なポジションで、鍵盤の高さをそろえて行きます。

その後カラ張り調整(鍵盤とアクションの接点ポジションの調整)を行います。

これで、なんとか鍵盤とアクションの動きが落ち着いて、

スムーズにピアノが弾けるようになります。

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7.MIDIスイッチ修理

アコースティックピアノであれば、この後調律をして終了となりますが、

これからMIDIスイッチのチェックと動作チェックに移ります。

CP60Mの「M」はMIDIの頭文字です。

初期のMIDIモデルですので、チャンネルも1チャンネルだけで、

鍵盤のON‐OFFとサスティーンペダルのON‐OFF情報だけの単純なものです。

しかし、MIDIを問題なく動作させるためには、

鍵盤下のMIDIスイッチの接点が正確に動作する事が必要です。

その為にスイッチ接点が曲がっていたり、歪んでいたりしていないか

スイッチを一つ一つ確認して、修理して行きます。

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先ずは、MIDIスイッチの接点位置の調整とスイッチングの状態を一定に保つために

MIDIスイッチと鍵盤側のロッドを一つ一つアジャスティングしていきます。

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その後、鍵盤をセッティングして、接点のスイッチング微調整を行います。

この時になくてはならないのが、MIDIシグナルチェッカーです。

このチェッカーで一音毎のMIDIのスイッチングをチェックします。

音だけで確認した場合、本体の音とMIDI音源の音のどちらが鳴っているのか

判断が難しく、MIDIの音源の発音が同時に行われているかどうかをしっかりチェックするには

なくてはならない工具です。

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MIDIからの音はこちらのMIDIプレーヤーで確認します。

音と鍵盤タッチのメンテナンスは最終段階に入ってきています。

本体のメンテナンス修理がほぼ完成したので、

残りは、ペダルの修理と、キャスターを含めた外装の補修となります。

ここまでで全体の作業の6割~7割と言う所でしょうか。

8.ペダル修理

CP60Mのペダルは、移動時に格納出来るように出来ています。

ペダルの動作状況を調べてみたところ、ペダルが正常に動きません。

分解してみると、パーツが欠損しており、内部の破損も見つかりました。

そこで、パーツをワンオフで手作りします。

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硬そうな木材をカットして、その後やすりで成形して行きます。

ちょっと気の遠くなるような作業ですが、

これが一番安く、確実な作業です。

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何とか無事に動作するようになりました。

ただ、破損個所は修復できないので、使う時に気を付けてもらうように後日説明します。

ヤマハCP60Mのメンテナンスもやっと終盤に差し掛かってきました。

10.調律、最終調整

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ここで調律をしながら全体の動作確認をした所、ペダルの動きに問題が発生!

やはり一部破損しているのと、パーツを手作りしている為

ペダルを踏んだ時に、僅かにノイズが出ます。

また、ペダルのガタも気になる為、ここはペダルを固定する事にしました。

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もともとペダルを収納出来るようにしたのは

運搬時に出っ張りを無くす為でしたので、

本来なら固定してあった方が、トラブルが少ないです。

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ちなみに、これまで修理したCP60Mは全てペダルが壊れていました。

そんな訳で、今回は今後の使用と故障にならない事を考えてペダルを固定しました。

もう少しで完成です。

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なかなか手強い相手でしたが、何とか元の状態に近い所までお戻し出来たのではないかと思います。

修理完了直後は何かしらのトラブルが起こる可能性があるので、

まだもう少しシーズニングしながら、動作確認をします。

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お預かりしてから約3ヶ月かかりましたが、なんとかCP60Mの修理、メンテナンスが

終わりました。

この後無事にお客様の元に戻りました。

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