ATLAS PIANO SU5 Maintenance 2022.11.07

アトラスピアノ SU5 修理、メンテナンス風景 2022.11.07

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2022.11.07 お客様にお求め頂いたアップライトピアノ アトラスSU5のメンテナンス作業を開始致しました。

まず下調律してピントルクの低下やアクション、鍵盤の不調が無いかチェックします。

また、内外装の傷み具合も同時にチェックします。

取りあえず、問題が無い事を確認したので、先ずは象牙鍵盤の漂白をします。

この時、もう一台別のピアノも象牙鍵盤でしたので、2台まとめて漂白しました。

象牙鍵盤の漂白は太陽が出ている時でないと出来ないので、天気の良い日に一気に行います。

当時でも象牙は高価な品だったので、鍵盤の手前側と奥側に別々の象牙を貼り合わせる方法が多かったのですが、

こちらのピアノは白鍵一つずつに一枚象牙を使用しており、とても贅沢な作りとなっています。

次にパーツ関係を外して、パーツ毎の接着剥がれや傷み具合を確認します。

鍵盤を外してバランスピン、フロントピンをチェックしましたが、

サビも殆ど発生しておらず、おまけに棚板も殆ど埃の無い状態で、

年式の割に、こんなに状態の良いピアノは珍しいです。

アクションも経年変化は有るものの、使用頻度が少なく、ハンマーの減りも殆ど有りませんでした。

ただ、製造から50年近く経っているので、化粧板の剥がれが有り、先ずはその補修から始めました。

続いて、ピアノを寝かせて分解し、ペダルの付いた底板と前土台も外して状態を確認します。

湿気が多い所に置いて有ったピアノは、底板のビスが錆びて、ビスが外せなくなる事が有りますが、

こちらのピアノはビスに錆びは出ていましたが、殆ど問題なく外せました。

これから本格的な修理とメンテナンス作業に入って行きます。

他の仕事の合間に行うので、なかなかまとまった時間が取れません。

従って、各ブロックごとの作業を順番に行って行く事になります。

2022.11.19鍵盤関係と弦、ピン関係の調整に入りました。

先ずは、白鍵、黒鍵の鍵盤バフ研磨です。

汚れやくすみを落とし、手触りもスムーズになります。

鍵盤バフ研磨前

ちょっと見えずらいかも知れませんが、キートップの輝きが違います。

鍵盤バフ研磨後

また合わせて、鍵盤からアクションに力を伝える為のパーツ、キャプスタンも研磨します。

キャプスタンバフ研磨前

このキャプスタンが長年の使用で、汚れが付着して、それが鍵盤の抵抗となって動きが悪くなったり

鍵盤抵抗が大きくなる原因の一つとなります。

キャプスタンバフ研磨後

全ての鍵盤のバフ研磨と同時にキャプスタンも磨き上げます。

キャプスタンバフ研磨前

キャプスタンの滑りが良くなると、ピアノも弾きやすくなります。

キャプスタンバフ研磨後
ピンサビ、弦サビ処理前
ピンサビ、弦サビ処理後
ピンサビ、弦サビ処理後

弦サビ、ピンサビを落とした後、本体フロントピンとバランスピンをチェックしたところ、

根元の見えない部分にサビが発生していました。

このままでも鍵盤側で調整するれば、ピアノを弾けない訳ではないのですが

やはりここはこれから少しでも長く、弾きやすく、良い音色のピアノであって欲しいので

全てのピンのサビを落とす事にします。

フロントピンはピンの上側は問題ないですが、パンチングに隠れた下側にサビの発生が有ります。

ですから、一つ一つのパンチングを外して作業しました。

真鍮ブラシで大まかにサビを落とし、その後スチールウールで処理した後

クリーナーで汚れを落として、最後はシリコンで仕上げます。

こうするとことで、鍵盤の動きがスムーズになるので弾いた時のタッチ感が良くなります。

また、サビを落としてその後の処理をする事で、新たなサビの発生を食い止める事が出来て

結果として故障なく、長く使えるようになります。

折角ですので、バランスピンも同様の作業をします。

このピアノを使ってくれるのは男の子の兄弟なので、いつしかピアノを弾く楽しさや

ピアノを弾けるようになる喜びを感じてもらえるように、

弾きやすくて良い音のするピアノになってもらいたいと想いながら作業する事約5時間

フロント、バランスそれぞれ88本、合計176本のピンを磨き上げて行きます。

作業をしていると、色々な事が頭を巡って来ました。

もし私が小さい時にピアノが有ったら、今はどうなっていただろうかとか

小学校の時に自宅にあったギターに興味を持って、

中学校では勉強もせずに1日6時間くらいギターの練習をしたこと

弾けなかった曲が弾けるようになった時の感動と喜び

中学の友達とバンドを作って、コンサートに出た時のドキトキ感と嬉しさ・・・等々

このピアノを使ってもらう二人の兄弟が、

素敵な音楽に出会って豊かな人生を送って欲しいと願いながら

あわよくば、ミュージシャンとなって一世を風靡して、昔使っていたピアノの紹介をされて

テレビに登場する、なんて妄想にかられながら1本1本磨き上げて行きました。

やはり全部磨き上げて光っているのを見るのは嬉しいものです。

本体内部の弦、ピン関係の作業はほぼ終わり、次の作業に取り掛かります。

ピアノの底板を外して、ペダルの磨きと各パーツの動きのチェックをしました。

ピアノの底板は普段は殆ど外したりすることが有りませんが、ペダルのきしみ音や

雑音が発生する部品もあるので、念入りにチェックします。

各パーツを全て外して分解して底板の掃除と裏側の塗装をします。

ペダルはバフ研磨した後取り付けます。

この時天秤のきしみやペダルのパンチングのすり減り等がないかも点検してから取り付けます。

ペダルその他、パーツには問題が無かったので、底板を本体に取り付けました。

底板の裏もラックニスを塗ってきれいにしました。

底板はペダル等、足で踏んで機能させるパーツが付いています。

脚力は以外に強く、底板がしっかりととまっていないと、きしみ音の原因となります。

その為、底板のビスは同サイズ(45×45)の新しいビスに交換しておきます。

ビスの締め込みも、前土台を抑えながら、トルクをしっかりとかけて締め込みます。

これで本体内部の調整作業は一応完了ですが、作業はまだ全体の40%位と言った所でしょうか。

これから鍵盤とアクションの調整、パーツのバフ掛け等々

メンテナンス作業はまだまだ続きます。

パーツ類のバフ掛けとクリーニング作業を行いました。

一つ一つ綺麗に仕上げていきます。

ピアノは音色やタッチが大事であるのは当然ですが、やはりこれから何年も使って行って貰うためには

外装や金属部品のサビ取りも大事な作業になります。

先日仕上げた鍵盤を戻しました。

やはりバランスピンやフロントピンのサビ落としと調整作業をしたので

鍵盤がとてもスムーズにセット出来ました。

これなら、タッチもかなり良くなったのではないかと思います。

各パーツも少しずつ仕上げて、取り付けて行きます。

来週中には完成させたいと思います。

2022.12.05 ほぼほぼ完成に近づいています。

マフラーもあまり減ってはいませんでしたが、

やはり汚れが付いて見た目も良くなかったので交換しました。

マフラーは音量を下げて弾きたい時に使用しますが、

音色がこもった感じになるのと、タッチが少し変わるので、使わない方は使いません。

マフラーを新品に交換して、本体に取り付けると、やはり綺麗な方がいいですね。

これで内部の調整もほぼ終了です。

磨き上げた外装パーツも取り付けて、いよいよ完成間近となりました。

後は、付属品の椅子の修理や出荷調律を行って、万全を期します。

2022.12.22 無事にお客様のお宅へ納品出来ました。ご依頼から納品まで約1か月半でした。

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

続く

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