COLOMBIA ELEPIAN EP601T Maintenance 2024.09.10

コロムビア エレピアン EP601T 修理 2024.09.10

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2024.09.04 大変珍しいエレピの修理依頼を頂き、引き取ってきました。機種はコロムビア エレピアンEP601T

症状は音が出ない、鍵盤が戻らない、連打が出来ないと言った鍵盤の不具合が中心です。アクションの動きを見ると、ピアノのアクションではジャックと呼ばれるパーツがスムーズに動作していません。本来なら鍵盤を弾いた時にジャックが上に持ち上がり、その後すぐに手前に逃げる動きをしますが、上に上がっても手前にすぐに逃げて来ません。

ジャックの動きが緩慢で、連打が出来ない、音が出ないと言った症状が起こっています。これは中々大変な作業になりそうです。

本体を探って行くと、アクションの下の部分の底板が取り外せる仕組みになっていたので、取り外して中を見てみました。するとアクションのジャックの取り付け部分のグリースが固着していました。

この固着したグリースを洗浄して除去しなければなりません。アクションの他のパーツに影響の無いように洗浄、除去して新たにグリースを塗りこむ作業となります。本来ならば、全て分解してパーツを取り外して行う作業ですが、このエレピアンのアクションは作りが特殊で、分解作業はかなりのリスクを伴うので、何とかこのまま作業が出来ないか考えて行きます。

2024.09.20色々と対処法を考えてみましたが、当初考えていたドライヤーであおってグリースを軟化させて取り除く方法は、プラスチックパーツを変形させたり破損させる可能性があるので、このままの状態で一つ一つ手作業で取り除く事にしました。

しかしグリースがかなり固く固着していたので、特殊な洗浄フォームをつかって暫く放置しておきました。

その後特製の治具を使ってグリースをそぎ落として行きました。

1オクターブを処理するのに2時間位かかりました。この後仕上げ処理をしますが、ここは効率は考えずに作業して行きます。

その後洗浄と拭き取りを3回行い、今日1日で2オクターブを仕上げました。ポイントがつかめて来ましたので、明日はもう少し手早く出来そうです。

2024.09.21今日は一日中固着グリースの除去作業を行いました。ジャックが動作するまで固着しているグリースを剥がす作業を一日やっていると、右手がつって来て連続して長時間の作業は出来ません。

それでも何とか全てのジャックのグリースの除去を終える事が出来ました。その後洗浄して暫くエイジングで時間を置きます。

高音部も問題無く動作するまでに回復しました。しかしスマホで動画を撮りながら鍵盤をたたくのは難しいですね。

2024.09.23再度ジャックの動きを確認して、動作が緩慢な所は再度グリースを落とす作業をしました。その後、新たにシリコングリースを塗布します。

特にジャックの回転部にピンポイントでシリコングリースを注射器で塗り込んで行きます。この後全ての動作確認を行い、問題の無い事を確認しましたが、時間経過でシリコングリースに硬化等の変化が無いかエイジングで様子を見ます。

もう一つ、鍵盤をタッチした後に、カタンと言うノイズが出ているKEYが有りました。良く調べて見ると、ダンパーが戻る時のクッションフェルトの剥がれが原因でした。

こちらはフェルトを接着して修理しました。アクションの奥の方なので、接着が難しく、極長ピンセットで作業を行いました。

2024.09.24電源を入れてスピーカーからの音出しをしました。問題無く動作してくれています。もう暫くエイジングで様子を見ます。

此方のエレピアンは背面にキャスターが付いていましたが、長期間そのままの状態の様で、キャスターゴムが変形していたり、割れていたりします。HAMMER CASTERを使用していたので、同じビス穴ピッチの規格品は今でも販売しているようですが、果たして必要かどうか、お客様と相談します。

2024.09.25全体の動作確認を行って、全て問題無く動作していましたので、本体のパーツの取り付けをしました。

ヘッドフォーン端子にヘッドフォーンを繋いで音出しをした所、一部接触不良がありましたので、CRC226で接触不良の対応をしました。また、ヘッドフォーン端子に緩みが有ったので、増し締めしておきました。

外部出力端子も確認して問題ありませんでした。

これで本体のメンテナンス作業は完了しました。明日以降、ペダルの動作確認を行って、全ての作業が完了となります。

2024.09.26今日は朝からダンパーペダルを取り付けて動作確認を行いました。このダンパーペダルの取り付けはかなり慣れが必要で、ペダルワイヤーの取り付けが甘いと、ダンパーが効くところと効かない所が出て来て、しっかりと取り付ける必要があります。

全鍵盤のダンパーの掛かり具合を確認して、問題無く動作しました。

全体を簡単にお掃除をして、カバーも取り付け、全ての作業が完了しました。大変レアなエレピですが、キズや破損も無く、とても程度の良い個体ですので、大切に使って行かれることを念願します。

終わり

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