フェンダーローズ マーク1 ステージモデル タッチ重い メンテナンス パート2 2023.08.21
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
2023.08.21前回から色々と試してみましたが、やはりタッチのもたつきが改善されませんでした。もたつきと言うよりは、鍵盤を弾いた時の底つき感とでも言ったら良いでしょうか?何ともしっくり来ない感じが拭えません。そこで当社の在庫品のMark1と比べてみる事にしました。
先ずはFender Rhodesの鍵盤アクションユニットを取り外しました。
横から見るとハープを載せている左右の土台は木製です。
それに対して、Rhodes Piano Mark 1のそれはアルミ製です。ケースへの止め方も違います。
時代によって素材や作りは随分違っています。
それぞれの鍵盤のバランスを比べて見ると、ほぼ同じバランスです。
ただ鍵盤を入れ替えて見ると、鍵盤を押し込んだ時の深さが若干違いました。
再度鍵盤のバランスをも少し細かく見てみます。
殆ど同じですが、若干黒鍵のホールの位置が違うようです。
定規を当てて計って見ると、白鍵のバランスホールはほぼ同じ位置でした。
しかし、黒鍵のバランスホールはFender Rhodesの方が少し手前側にずれて空いているようです。
ダンパーの取り付け方法もFender Rhodesの方は一つ一つビス止めしています。
Fender でないRhodesの方は、アルミ製のまとまった形状でビス2つで12音、1オクターブをまかなっています。
また、ダンパーの形状も違っており、ダンパーがかかるタイミングがFender RhodesとRhodes Pianoで違っていました。
ダンパーの形状が違うので、ダンパーがかかるタイミングが違って来て、その結果タッチ感が違って来ることが分かりました。
Rhodes Pianoのダンパーは取り付けが簡素化されて、とてもスッキリした状態です。
それに比べるとFender Rhodesは一個一個ビス止めで固定されており、ダンパーの形状もまっすぐストレートな感じです。アクションもハーフウッドのハンマーを使われているので、これらの全てのパーツの相性によってタッチ感が形成されている様です。
エンブレムもFender RhodesとRhodes Pianoではシールの位置が違います。Fender Rhodesはハープの手前側にシールが貼ってあります。
Rhodes Pianoの場合は、ハープの奥側にシールが貼ってあります。
とにかくFender RhodesとRhodes Pianoのタッチの違いの原因がどこに有るのか、全て比べて見ようと思い、それぞれの鍵盤を比べて見ました。
鍵盤のウッドブロックの奥側はFender Modelの方がやや高さが高いようです。
しかし手前側はほぼ同じです。
長さはFender Modelの方が少し短いようです。Rhodes の方はウッドブロックの手前側の木部が加工されていました。どうもこの形状が怪しいんじゃないか?とピンときました。
それぞれの白鍵を隣どうしでセットして弾いて見ると、Fender Modelの方はハンマーが少し下がっています。
折角アクションを下したので、ついでにケース内をお掃除して、擦り減っていたダンパーロッドホールのフェルトを張り替えておきました。
モデルの違うハンマーだとハンマーストップの高さが違って来るのは何が原因なのか、それなら実験と思い、小さなフェルトをウッドブロックの手前側にくっつけて弾いてみる事にしました。
取り合えずなので、マスキングテープで仮どめして本体にセットしてみました。
案の定、ブロックの手前にフェルトをくっつけた方のタッチは全く変わって、動画でもコツコツと鍵盤が底打ちするのが分かります。
ちなみに5つの鍵盤のブロック手前にフェルトを貼り付けたら、ハンマーの位置が上がっているのが分かります。やっとタッチの問題が解決出来そうです。
2023.08.29鍵盤ブロックの手前側突起の寸法を1㎜、1.5㎜、2㎜、3㎜でそれぞれのタッチ感を試してみました。すると1㎜と1.5㎜では少しの変化は感じましたが、タッチが変わったと言ったダイナミックな変化は感じられませんでした。そこで2㎜厚と3㎜厚のパーツを作って、試してみました所、かなり大きなタッチ変化を感じられました。そこで2㎜か3㎜でと考えましたが、さすがに3㎜は出っ張りすぎる感があるので、2㎜で作る事にしました。
今回は1㎜のプラ板を使用していますので、取りあえず2枚を重ねて接着して2㎜厚を作ってみました。それぞれの鍵盤にタッチの底突き感と言ったらよいでしょうか、タッチが本当にスッキリしたタッチに変わりました。
パーツを作るために色々な素材を探しに行きました。なかなかぴたったりと合う素材が見つかりませんでしたが、あちらこちら探していく内に良さそうなプラ棒が有りました。幅が9㎜で厚さが2.5㎜で2㎜と3㎜の中間の厚みでしたので、これを使う事にしました。カットはプラ用鋸と薄刃鋸を使って73個を切り出しました。
手作業の為寸法が不揃いですが、後でヤスリやペーパーで研ぎ出しして成形する事にします。
午前中一杯かけて下処理を済ませて、パーツ作りを終えました。午後からいよいよ鍵盤への接着をして行きます。
午後になって鍵盤ブロックのブッシングクロスを剥がす作業から始めました。
ブッシングクロスは鍵盤手前側から爪で剥がして行くやり方のほうがキレイに剥がれます。
剥がしたブッシングクロスとブロックの間に午前中に作ったプラ板片を接着して、クランプで固定します。
暫く時間を置いたらクランプを外して、マスキングテープを剥がして接着状況を確認します。プラ板片が曲がって着いていないか、接着がしっかり出来ているかなどを確認した後、再度マスキングテープで固定してこのまま一日置きます。
翌日マスキングテープを剥がして接着具合を確認しました。皆しっかりと着いていましたので、これから本体に取り付けて次の作業に進みます。
ここで鍵盤の木場を見ると結構黒ずんだ汚れが付いていましたので、せっかくなので木場の汚れ落としと鍵盤バフ仕上げをしました。
木場の汚れは鍵盤を弾いた時に指の側面や指先が隣の鍵盤に当たって着く汚れが原因です。ペーパーやスチールウールを使って汚れを落として行きます。
鍵盤の上面は白鍵用、黒鍵用別々のバフで研磨します。とても綺麗になりました。
鍵盤を本体にセットして見ると、タッチ感は抜群に良くなりました。しかし、キーブロックに2.5㎜の厚みが加わった関係で、鍵盤を2.5㎜押し下げている状態になり、ダンパーが少し離れ気味になるので、音の止まりが悪くなります。その為、これからハープ調整をして止音不良を無くして音色調整まで行います。
実際に調整作業を進めるとこれが中々厄介です。2.5㎜と言う寸法はRhodes Pianoのハンマー、ダンパー両方に働くため、今度はそれぞれの働きが狭くなって、止音をメインに調整するとハンマーがタインにくっついて音が出なくなります。逆にハンマーの当たりをメインに調整するとダンパーの効きが悪くなります。おまけにトーンジェネレーターの高さを変えると音色も一緒に変化してしまうため、微妙な位置調整が必要になります。これは1日では終わりそうにないので、明日また時間をかけて調整に挑戦です。
朝から1日かかりましたが、何とかハープ調整、ダンパー調整、音色調整が完了しました。特に音色については非常に限られた範囲の中での調整となるため時間がかかりましたが、何とか満足出来るレベルに来れたのではないかと思います。しかし、2.5㎜の厚みがこれ程調整を難しくするのだと改めて教えて貰いました。
これから1日、2日エイジングして再調整を施します。変化の無い事を願います。
2023.12.07あっという間に年末となってしまいました。昨日お客様のお越し頂き、試弾して頂きました。お客様も納得して下さいました。そこで外装のクリーニングもご依頼頂きましたので、早速時間が取れる時に他の作業の合間をぬってクリーニングを進めて行きます。こちらは脚とクロスバーのセットですが、先ずはこちらのクリーニングから始めました。
他の修理の合間をぬってと言う事でしたが、結局下処理に2時間位かかりました。
現在平行作業で修理中のRhodes Pianoが4台有ります。それぞれ時間がかかる修理ですので、合間合間にこちらのクリーニングを進めて行きます。
12月18日以降になると、かなり忙しくなるので来週中に完成させる予定で作業を進めて行きます。
金属パーツ類は全て取り外して、下処理をした後バフ研磨して仕上げます。これが最近、結構身体にこたえるんです。
本体のトーレックスもプリアンプパネルも全て綺麗に仕上げました。
2023.12.12金具を全部バフ研磨して磨き上げました。最近これが身体にこたえるんですが、下処理は他のスタッフに依頼したので少し楽でした。金具は新品に交換してしまえば簡単なのですが、全くキズの無い新品の金具に交換すると、そこだけ妙に綺麗すぎて、何だか違和感が有ります。元々取り付いていた金具はサビだらけですが、それを落として、少しキズがあるけどそれなりに光ってるほうがスッキリします。だからあえて、磨きの作業をしています。
本体もそれまで仮の台に乗せて作業していましたが、今回純正の脚をセットしてチェックしました。
幾つか欠損パーツが有ったので、全てのパーツを揃えて取り付けました。これでほぼ完成です。明日は最終調整を行って、いよいよ12月14日にお客様の元に納品となります。
2023.12.13出荷の為の最終調整と調律を行いました。音色調整はトーンジェネレーターの位置合わせが難しく、ちょっと力を加えると位置がズレてしまいます。アナログ楽器の醍醐味と言えるかもしれませんが、技術者泣かせです。
何とかじゃじゃ馬娘をなだめるように作業を完了して、後は本体の梱包に移ります。
脚の取り外しは、男二人であればエイヤーと寝かせて作業をするのですが、生憎今日は女性スタッフしかおらず、その為ピアノ用のクッション椅子に一度載せて脚を取り外します。こうやれば、脚の破損や落下事故を防げます。いよいよ明日お納め致します。
2023.12.14無事にお客様の元へお納め出来ました。末永く使って頂けたら幸いです。
終わり