フェンダーローズ スーツケース 73 修理 千葉県より 2025.01.04
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン

2024.12.29千葉県のお客様よりFender Rhodes Pianoの修理のご依頼を頂き、引き取って来ました。現状ではノイズが発生して全く音が出ません。

高音部の白鍵は4鍵剥がれています。

お客様から交換用として一緒にお預かりしましたが、鍵盤ブロックの形状が違うのと、鍵盤の木取りの違いで入れ替えて使う事は出来ません。

また、鍵盤にガタツキが有ると言う事でしたので、ブッシングクロスを確認するとかなり擦り減っていました。これは要交換です。

また、内部を見てみると、ハンマーがバラバラで、アッチ向いてホイの状態です。このままではちゃんと使えないので、一度全体を分解して、パーツを一からチェックして、不良部品は交換が必要です。これはかなり長丁場の作業となりそうです。

2025.01.07貼り替え用のアイボリーの鍵盤を発注しました。少し白かったです。さて、どうしましょう。

2025.01.24どこから手を付けて行ったら良いのか思案に暮れていましたが、丁度当社に同じモデルのRhodes Pianoがあったので、4ピンケーブルを当社のアンプに繋いで見ると、音が出ました。すると、当初全く音が出なかったのはアンプの故障か配線のトラブルが原因のようです。そこでハープからプリアンプまでの配線をチェックしてみると、ハープ側のRCA端子に接触不良がありました。
RCA端子を指で触ってみると、音が出たり出なかったりします。先ずはこの端子とプリアンプまでのケーブルが原因でした。
その上で、音出しチェックして見ると、ビブラートのインセンシティの動作がおかしいです。まあ取りあえずは音が出たので、これからの作業の方向性を考えられます。

2025.01.25プリアンプからアンプに繋げる4ピンケーブルのゴムカバーがとれていたので、取りつけた後グラスファイバーヤスリで接点を磨き上げました。とにかくvintage楽器は接触不良のかたまりと思った方が良いです。

RCA端子からプリアンプに繋がるコードを抜いたら、なんと本体から繋がるアースのコードが浮いていました。アース側の端子に突っ込んでいただけのようで、これが悪さをしていた原因の一つのようです。

指でくっつけてみたら、ちゃんと音が出ました。

取りあえずワニ口クリップでアースを繋いで動作確認をしました。
すると、ビブラートを制御するフォトカプラーに異常があるようです。
ビブラートのインセンシティをマックスにすると、ノイズが発生します。これまた、先が思いやられる症状です。

2025.01.30当社在庫の同型のRhodes Pianoに繋いで動作確認を行った所、先ずプリアンプの故障があるのは確認出来ました。それに加えて、どうもメインアンプもノイズが乗っています。このノイズはプリアンプから発生しているものとは別のもののようです。どこから手をつけて言ったら良いのか、思案にくれてしまいます。

2025.03.26どこから手をつけて言って良いのか、思案に暮れていましたが、兎に角何かしら進めて行かないと前に進まないので、鍵盤から始める事にしました。

白鍵が剥がれていた所の張替えの為に、在庫であったアイボリーの鍵盤と新たに取り寄せたアイボリーの鍵盤で位置合わせをしてみました。

すると在庫の鍵盤は長さが足りません。

逆に取り寄せた鍵盤は長さが長すぎます。色合いは在庫の鍵盤の方が元の鍵盤の色に近かったですが、寸法が足りないのは問題なので、今回は取り寄せた鍵盤を使う事にします。

中を覗くとハンマーがバラバラなのが気になります。明日以降、少しずつでも前に進めて参ります。

2025.04.01今日は白鍵の加工から作業を行いました。アイボリー色の鍵盤は小口付きの一体鍵盤しか無いので、小口をカットします。

カットした小口のバリをヤスリで落として成形します。

次に長さ合わせの為、14.9㎜の長さでカットします。

この鍵盤は手前部分も長いので、接着した後に欠き部分の落としをしなければなりません。一つ一つの作業が手作業となります。

2025.04.03成形した白鍵のキートップを接着しました。前後左右の位置出しが難しかく、手前側のチリの出に合わせて貼り付けしなければならないのと、鍵盤の厚さがアコースティックピアノの物より薄い為、圧着に手間取りました。

接着が終わったので、ヤスリ掛けをして成形をしました。やはりガイドが無い状態でピタリと合わせるのは至難の業です。

本体にセットしてチリの出を確認しましたが、まあまあの出来でしょうか。

鍵盤を覗いて行くと、キーブロックの根元辺りがささくれています。これはハンマーと干渉しているのだと思われます。これから本格的に鍵盤の修理に入りますが、気を付けてチェックしなければなりません。

2025.04.08鍵盤の棚板のお掃除を行い、内部のチェックをしました。

ハープをとめてあったビスは純正のものではありませんでしたが、この形状のビスは日本製ではなさそうですので、USAでメンテナンスを行った時に使ったのではないかと考えます。

内部もやることてんこ盛りです。どこから手を付けていったら良いか悩みます。

ハンマーチップもいくつか交換されていました。

ハンマーのばらつきの原因は、アクションを分解してみないと分かりませんが、最低音のハンマーはフレンジのピンが抜けかかっていました。

ダンパーフェルトも取れて無くなっていたり、形状が変形しています。

2025.04.10鍵盤ブロックにチップを貼り付ける改造のため、パーツのチップを作成しました。

厚さ1.5㎜のチップを鍵盤数分作ります。おおよそ同じ幅になるようにカットして、幅が大きい物は後でペーパーで成形しました。

鍵盤ブロックに取り付ける位置は、鉛筆で線を引いておきます。この位置に合わせてチップを貼り込んでいきます。

最初の一つを作った時に、チップを貼っていないオリジナルの鍵盤と弾き比べたところ、本当にタッチが全く変わります。まさに感動的と言える位の違いとなります。

2025.04.11鍵盤ブロックに張り付けたチップを成形しながら、取り付け位置や状態を確認しました。元々のブッシングクロスが短めだった為、チップがはみ出ていますが、手前側は動作に問題は無いので、このまま進めようかと思います。

折角なので鍵盤の木場の汚れを落としました。

この木場の汚れはRhodes Pianoの使用者の数十年分の手垢が付いたものです。

昔アコースティックピアノの修理を依頼された時、ご依頼者のおばあちゃんが「古いピアノには前に使った人の念が付いている。」と言っていた事を思い出しました。

この木場の汚れ落としはこう言った「念」を落とす事なのかも知れません。ただ、全て手作業で結構大変な作業です。

鍵盤の後はハンマーのチェックを行いました。最低音のハンマーはフレンジに取り付けるピンが緩くて抜けてしまいます。このピンも太くても細くてもダメなのですが、特殊な太さの為パーツとして入手出来ません。交換用のハンマーが有るかどうかですが、在庫品から引用出来るものがあれば移植します。

また、いくつかのハンマーも交換されているようです。こちらも動作不安定なハンマーは交換したいところです。

ケースの中は思ったほどホコリが溜まっていませんでした。

裏側に大きな破れが有りました。

こちらは接着しておきます。

2025.04.14当社の部品取り在庫品からハンマーを一つ外して、形状を確認しました。ハンマーの形状は同じですが、フレンジを止めるセンターピンが部品取り在庫の方はハンマー側に突起を付けてはめ込む仕組みになっています。こちらの方がハンマーのぐらつきが出ないので、Rhodes Piano社も改良したのでしょう。

現時点でハンマーのグラつきがあるのは、1・5・7・18・21・34・36・44・45・71の10KEYとなりますので、こちらは交換して行きます。

2025.04.15今日はケースのクリーニングと補修を行いました。

背面の両角はガムテープが貼ってあった跡が劣化していたので、粘着剤を剥離してトーレックスの剥がれは接着しておきました。

2025.04.151ダンパーロッドホールのクッションフェルトが朽ちていたので、ブッシングクロスで補修しました。

この辺のフェルトは無くても問題有る訳ではないですが、無いとなにかしら抵抗が出て来たりしますので、補修しておきました。
く