Hohner Clavinet D6 Maintenance 2023.12.05

ホーナー クラビネット D6 修理 2023.12.05

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2023.12.05お客様よりホーナークラビネットD6の修理ご依頼を頂き、お客様の手配で本日入庫しました。

先ず音出し確認の為スイッチを入れようとすると、すでにスイッチはONの状態になっていました。

これではバッテリーが放電してしまっているので、先ずは電池交換して音出し確認をしました。すると一応発音はしました。

ただし、弦が2本切れていました。こちらは交換が必要ですが、クラビネットの弦は1台分を取り寄せなければなりませんので、それなりに費用が掛かります。

また、クラビネット特有ですが、ノイズがかなり乗っており、これをどう対処するかも必要となりそうです。このノイズ対策は一筋縄では行かない場合が多く、難儀な作業となりそうです。

鍵盤のチップは透明ゴムを使用していました。

通常のゴムチップは黒かオレンジなので、このチップは珍しいです。

2024.01.15修理が溜まっていた為、少し時間が空きましたが、やっとD6のメンテナンス作業に取り掛かる事が出来ました。

取りあえずは全弦交換作業ですが、先ずは取り外せるパーツは取り外して行きます。こちらはミュートバーのスプリングです。演奏者から見て上方向のスプリングは割と簡単に外せるのですが、問題は下側です。

こちらはミュートバーを支えるスチールロッドの穴にくっついている為、スプリングの取り付け部が外れにくく、ミュートバーの固定ビスを外してミュートバー自体を外してスプリングを取り外しました。

ミュートバーを取り外してみても、弦を止めてあるヒッチの隙間がやたらと狭いです。これは製造時はハープに弦を貼り込んでから本体にセットする方法で作業をしていたからだと思います。

もう一つ重要なのが弦の張り位置です。D6の弦を張る為のヒッチは何故か1個余るように作られていて、この張り位置を間違えると後で飛んだ目に会います。こちらは低音部が初めのヒッチに取り付いています。

高音部のヒッチは一つ余っています。この位置を間違えると、打弦の位置が変わってしまい、あとの調整がえらく大変な事になります。

弦を取り外し易くする為に、こちらの木製ブロックも取り外しました。

すると、その下にビスが頭を出して本体の木部を持ち上げて、表面の板が割れてしまっていました。

このビスが何なのか確認した所、本体底面部に取り付けられた金属プレートを固定する為のビスでした。

念のため木部を接着してから、下穴を開けてビスがしっかりととまるように補修しておきました。

いよいよ弦を取り外して行くと、今度はもう一つの木製ブロックが、ハープに食い込んでいます。これもハープに弦をセットしてから本体に取り付けるので、ここが当たっていても発音に問題は有りませんが、もう少し考えて欲しい所です。

仕方ないのでピックアップを外して、ハープも外して作業しました。しかしいずれまた弦交換をする事も有るのではないかと考えて、木製ブロックの角を小刀で落として、そのままの状態で弦交換できるようにしました。

弦を外して行くうちに、何本かの弦が切れてしまいました。

これは真鍮のベアリングが錆びてしまい、弦にもサビが発生したためと思われます。一応このベアリングも綺麗に磨き上げてセットします。

2024.01.18今日は張弦前の下準備として、真鍮のベアリングのサビ落としとバフ研磨、そしてメタルクリーナーで仕上げました。これで弦切れの頻度はかなり下がるはずです。

もう一つ、鍵盤を押した時に鍵盤のタンジェントで弦を抑える部分もお掃除と磨き上げをしておきました。

ここは弦を押さえて発音させる場所なので、やはりゴミやサビは無い方が音はクリアになるはずです。

今日は下処理までで、張弦はまた改めて行います。弦の中身を確認する為にパッケージを開けてみたら、昔懐かしいピースマークがついていました。今から55年前の1969年のウッドストックフェスティバルの時に初めて見た記憶が有ります。間違っていたらごめんなさい。ピースマークは鳩の足を模って作られたと聞いています。私もハンダを溶かして、ペンダントを作ったのを覚えています。

2024.01.22全ての弦交換が終わりました。弦は素手で触らないように手袋をはめての作業となるので、なかなか捗らず時間がかかりました。ちなみにクラビネット1台弦交換すると手袋は1セット消耗します。

その後、ハープ部を本体に取り付ける作業をしますが、ビスの位置を間違えないように全て番号をふっておいたので、スムーズに取り付けが出来ました。

ただ本体下に取り付けて有った金属プレートは、ビスが突き抜けていたり、一つ欠損しています。

つき抜けていたビスは補修しておきましたが、欠損しているビスは何処にくっつくのかを調べて、必要なら同じピッチのビスを探して取り付ける必要が有ります。

ビスの取り付け位置を確認したら、ハープ部の金属部に機械ネジでとまるようになっています。もしかすると、ノイズ対策の意味も有るかも知れませんので、こちらはビスをしっかりと止めたほうがよさそうです。ピッチがインチの可能性が有るので、探すのがちょっと大変かも知れません。

2023.01.23ビスのピッチを調べてみましたが、どうもピッタリ合うビスが有りません。JIS規格でもなくインチでも合うビスが見当たりませんでしたので、何とかトルクを確保出来そうなピッチのビスを探したらM4のビスで何とかなりそうでしたので、M4×25㎜のビスを購入して取り付けてみました。すると長さが足りない。仕方なく当社の在庫を探してみたら、M4のビスが沢山在りました。何時も無いと工具店に買いに行っているので、結構いろんなビスが有るのに忘れてしまっています。

少し強引ではありましたが、M4×30㎜で何とか固定できました。

その後調律に移りましたが、今度は弦当たりがバラバラで、幾つかの鍵盤はちゃんと発音しません。なかなか一筋縄ではいかないようです。

2024.01.25一通り下律(ピッチを高目にして、ザーッと調律して弦を安定させる作業)を終えましたが、どうも音色不良と共に音量にバラつきが有ります。

そこでクラビネットD6用のハンマー角度調整の為のテンプレートを使って、ハンマーの位置の調整をしようとしたところ、どうも違和感が有ります。

そこでハンマーチップ一個一個を目視して行ったところ、タンジェントが曲がっていたり、しっかりと固定されていないゴムチップが有ったりと、ゴムチップの高さにかなりのバラつきが有りました。これが音量の不揃いを起こしていたようです。

ただこのゴムチップのバラつきがタンジェントの締め込み不足なのか、前についていたゴムチップのカスが残ってしまっているのかは分かりません。今後どうするかはお客様との相談になります。

2024.01.26ゴムチップを一つ外してみました。指でつまんで引っ張ったら簡単に取れてしまいました。本来純正のゴムチップであれば、プライヤー等を使わないと取れないのにこんなに簡単に取れてしまうのはおかしいです。形状と太さを見てみたらこれはクラビネット用のパーツではありません。これではちゃんと演奏する事は出来ません。

2024.02.19オーダーしていたパーツが届きましたので、早速交換作業を開始して行きます。クラビネットのハンマーゴムチップはタンジェントに取り付けた時に、高さが揃うようにゴムチップが成形されていて、アゴの部分がタンジェントに引っ掛かるようになっています。これによって、鍵盤の力を弦にダイレクトに伝えて発音する仕組みとなっていますので、元々付いていた透明の部品では腰が弱く、おまけに打弦位置が確定出来ないので演奏には使えません。

取り付けにはプライヤーを2本使って、位置や角度を確認しながら取り付けて行きますが、決して1度で問題無く取り付く事は有りません。

そこで便利な道具が有るのですが、これも絶対では無いので、最終的には本体に組付けて発音を確認しながら鍵盤を付けたり外したりを繰り返す事になります。

そんな中で、ゴムチップの不良品が有りました。打弦面に筋が入っていましたので、これは再度交換しました。

全てのゴムチップを交換して音出しをしました。幾つか音量や打弦不良の鍵盤が有りましたので、タンジェントの位置調整や鍵盤の取り付け位置の調整で問題解決しました。ただ、ノイズが気になります。

これは、この場所におけるノイズの場合やアンプ、シールドケーブルによる場合も有りますので、もう暫く様子を見ます。

2024.03.17年の為接点スイッチの洗浄を行ってみました。ノイズの乗りはあまり変化が有りませんが、鍵盤をたたいた時の音色と音量に少しバラつきを感じます。時間が経過してパーツが動いたのかとも考えました。

しかし水平方向から鍵盤を覗くとかなりバラツキが有ります。何故こんなにバラつきが有るのかは定かではありません。

定規をあててみると1㎜以上の差が有ります。これがタッチや音量などに影響していた可能性があります。

しかしクラビネットの鍵盤はスチール製のフレームにスプリングで止めてある構造なので、何故このようなバラつきが発生しているのか不明です。ただ、ハープ部を取り付ける為のビスが1本欠落していたので、これも何か関係しているのかも知れません。

2024.04.18最終チェックと調律を行いました。鍵盤のバラツキはスプリングのテンションが影響しているようです。こちらは取りあえず様子を見てもらう事にします。

2024.04.27お客様がお越しになり無事にお渡しする事が出来ました。

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