HOHNER Clavinet D6 maintenance another instruments 2023.06.12

ホーナー クラビネット D6 修理  2023.06.12 同時にお預かりの別の1台

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2023.06.12世の中には引き寄せの法則なるものが有ると言われていますが、今回はそんなことを強く感じました。

ホーナー クラビネットD6と言うモデルが同時に2台修理依頼の為当社に持ち込まれました。クラビネットD6自体非常にレアなモデルで、国内に何台位有るのか数えられる位希少なモデルです。それが2台同時に修理で持ち込まれるなんて、なんと恵まれているのでしょうと喜びを隠せません。大変だけと何だか嬉しいです。

お客様に現状の様子をお伺いすると、戻らない鍵盤が有ったり、音が出ない、出にくい鍵盤が有るとの事。そこで全体を俯瞰しながら何か違和感が無いかを見てみます。

すると、フロントカバー低音側の取り付け位置が浮いています。

その後、音出しをしてみたら、最低音が戻って来ない。よく見ると鍵盤の位置がずれて、奥に入り込んでいます。

白鍵を前面から見ると、確かに最低音の白鍵の取り付け位置が曲がっています。

このような症状は初めてでしたので、鍵盤ユニットを外して何かどうなっているのか確認しました。

すると鍵盤を取り付けてある金属のアンカー?が歪んで曲がっています。何か大きなショックで曲げられた物と推測します。

そこで、低音部側のパーツを確認したところ、左側パネルを取り付ける土台の木材が割れて、接着剥がれを起こしていました。

左側パネルの奥側も欠けています。何らかのショックが有った証拠です。

それに付随して左側パネルを固定するビスも。頭の部分が破損しています。どこにどのような力がかかったのかは分かりませんが、なにか強い衝撃が有ったようです。

他の作業の納品日程が先になったのでうまい具合に時間がとれたので、鍵盤を外して中の様子を確認しました。

やはり鍵盤を取り付ける金属ステーが曲がっています。鍵盤や外装に大きなキズが無いので、どうも本体を落としたのではないかと思われます。外装の箱や梱包材が残っていれば、へこみやキズが有って確認出来たかも知れません。

取りあえず慎重にステーを元の位置に戻す作業をしました。

また、鍵盤左側パネルを取り付ける木材の土台の接着をしておきます。

割れていたビス頭は一度接着した後、大雑把ですがエポキシパテで取手部分を成形しておきました。

元の状態に戻した鍵盤ステーに鍵盤を取り付けてみましたが、最低音とその隣の黒鍵の動きに抵抗があります。そこでもう一度鍵盤を外して、問題ない鍵盤のステーと手前側のガイドステーをチェックしてみました。

目視では分かりにくいですが、やはり鍵盤が奥側に押された衝撃でガイドステーも歪んだようです。こちらもプライヤーで少しずつ位置調整をして行きます。

両方のステーを補正したので、最低音の白鍵を取り付けてみましたが、まだ抵抗があります。

再度取り外して鍵盤側を見てみると、鍵盤の金属部が歪んでいました。今度はこちらを補正して取り付けてみると、抵抗もなくなり問題無く動作しました。本体側のステーだけでなく、鍵盤も歪みが出ていたようです。

そこで黒鍵も確認してみると、やはりこちらも歪みが発生していましたので、こちらもプライヤーで歪みを補正しました。

取りあえずこの状態で本体に取り付けて動作確認をしましたが、黒鍵の抵抗は取れません。別の個所の黒鍵を外して取り付けてみましたが同じように抵抗が有ります。と言う事は本体側に問題が有るようです。

鍵盤を外してはステーを補正して鍵盤を戻す、また鍵盤を外してはステーを補正して鍵盤を戻すを数回繰り返しました。しかしどうしても他の鍵盤の様にスムーズに動きません。

鍵盤の取り付け位置を見てみると、黒鍵の左側の隙間と右側の隙間の寸法が違います。どうも右側にずれているようです。これは取り付け用のステーがまだ正規の位置に戻っていないようです。

何度も本体ステイと鍵盤のマッチング調整をして、やっと鍵盤も問題無く稼働するようになりました。

当初戻らなかった鍵盤もスムーズに動くようになり、音出しも問題無く発音しています。

ただ鍵盤によっては音色や音量がバラバラで、ピッチもかなり下がっています。クラビネットの場合はストリングのテンションはそれ程高くないので弦切れの心配は割と低いのですが、それでもやはりサビが浮いていたり弦の細さも手伝って弦切れが心配です。ピッチを測って見ると、A=436Hz位の音程でした。

2023.07.07全体の調整を終えて調律をする為に鍵盤ユニットをセットして、スクリューナットを締めこもうとした時にすんなり行かず、何か違和感を感じました。再度鍵盤ユニットを取り外してスクリューナットが取り付く台座部分を見てみると、なんと本体側のスクリューが曲がっているではありませんか。ここは鍵盤の高さを決める部分なので、赤いペイントで位置を固定しています。その為へたに強く力をかけてしまうと二次災害の恐れがあるので、仕方なくこの状態でナットがを取り付ける事にしました。

何とかセット出来たので、A=441Hz で調律を行いました。かなりピッチが下がっていたので弦切れが起きないか心配でしたが、ピッチを上げる時にも慎重に行い何とか無事に調律が完了しました。

全てのパーツを取り付けてみましたが、やはり全体的に何かのショックによる歪みが出ていて、パーツもしっくりと取り付いてくれません。歪みやズレを少しずつ補正しながらなんとかセッティング完了しました。ただ、調律の時に気が付いたのですが、鍵盤をたたいた時の音量にバラつきが有りました。これは鍵盤をたたく時のパーツ、ハンマーホルダー(タンジェント)の曲がりや位置のズレが原因で、弦にまっすぐに当たっていないのではないかと思われます。このハンマーホルダーの調整は目分量では難しく、専用のハンマー調整テンプレートが無いと正確には出来ません。取り寄せるとなると海外発注で費用も日数もかかります。取りあえずはどうするかお客様とご相談となります。

2023.08.07発注していたハンマー調整テンプレートが届いていたので、早速調整作業を始めました。

この調整用テンプレートは大変便利なのですが、ハンマーホルダー(タンジェント)の位置や角度がズレていた場合の調整が中々厄介ではあります。しかしポイントをしっかり調整しないと音色や音量に影響が出るので、時間がかかっても一つ一つ見て行きます。

ハンマーホルダー(タンジェント)の位置調整が終わったら弦当たりと弦の位置を調整して作業は終了です。その後再度調律をして全ての作業を完了致しました。こう言ったビンテージ楽器は気温や湿度変化に影響されやすいので、もう暫くエイジングで様子を見ます。

2023.08.14台風7号の接近で、当初明日15日に引き取りにお越し頂く事になっていましたが、1日前倒しで14日にお引き取りにお越し頂き無事にお戻しが出来ました。有難うございました。

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