MELLOTRON damage repair 2024.05.10

メロトロン 破損修理 2024.05.10

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2024.05.10都内のお客様からのご依頼で、メロトロンをお預かりしました。

輸送中の事故のようですが、黒鍵が一つもげています。

取れた黒鍵付近の鍵盤も曲がってしまっています。

本体も良く見ると、一部ヒビが入っています。果たしてどんな力が加わったのでしょうか。それが分からないと、全体のダメージ状況もつかめないので、ちょっと時間がかかりそうな予感がします。

裏蓋を開けて中を覗いてみると、ビスが1本落ちていました。なんのビスなのか、とにかく改めて時間を取ってチェックして行きます。

2024.05.14本体のダメージ確認の為、鍵盤を外してみました。特にダメージがひどかった低音部の黒鍵とその近辺の白鍵の歪みの状況を確認しました。

修理に関しては因果関係が分かるか否かで、修理に対する対応が全く異なります。原因が分かっていれば、それに対して内部の状況をチェックして、元の状態に戻して行けば良いのですが、原因が分からないとどこにどんなダメージが有るのか分かりません。

それに加えてオリジナルの状態が分からないとなると、暗中模索状態で作業を進めなければなりませんので、何が起こるか分からない不安が付きまといます。

全ての鍵盤を外して内部を眺めてみると、内部の構造には大きなダメージは見当たりません。少しホッとします。

ただ音源のテープを見ると、一部切れているように見えました。

ただよくよく確認すると、鍵盤のローラーが当たる部分で、鍵盤を押した時の発音開始時に、ローラーとモーターからの回転を伝えるロッドがこすれて磁体が剥がれているようです。

現在お預かり中の別のMellotronと内部の構造やパーツの取り付け位置等を確認してみましたが、システムが違っておりあまり役に立ちません。それでもモーターからテープまでの状態を確認して問題は無さそうです。

そこで電源スイッチをONにしてみました。

モーターは問題無く回ってくれました。

2024.05.17スイッチ関係の動作確認を行いました。VOLUME、TONE、PITCH共にボリュームポッドの抵抗が低く、クルクルと回ってしまう感じです。また、A、B、Cの切り替えスイッチも機能していません。

もう一台のMellotronと比べてみても、こちらもボリュームポッドの抵抗は少ないですが、それよりももっと抵抗が無い感じでした。

A、B、Cの切り替えスイッチは単純な構造なのですぐに元通りに出来ると思っていましたが、何が原因なのか中々つかめません。

取りあえず、動作を伝える為の金属バーを外してみましたが、特に破損やロッドの折れ等は見当たりません。しかし本体に取り付けようとしても取り付け出来ません。

それならばと本体の構造を見てみると、横方向だけでなく縦方向にもガタツキが発生しています。横方向は切り替えスイッチの動作をする為に動かなければならないのですが、縦方向は何が原因なのかと探ってみました。するとあるはずのビスが無い。

もう一台の方を見て見ると、やはりパーツがビス2本で固定されています。先日ケース内に転がっていたビスは、どうもこのビスのようです。

2024.05.28鍵盤のローラーが軋むので、注射器を使ってローラーの軸部分にWD-40を塗布しました。この作業はローラーの外周面にWD-40が付かないように作業を行う為に注射器を使います。

処理前のローラーはキュウキュウときしみ音を発生します。

WD-40を沁み込ませた後は、殆どノイズが出ず走りもスムーズになりました。

全ての鍵盤のローラーを処理するのに、今日一日かかりました。

2024.05.30今日は黒鍵の割れの補修と本体のスイッチビス欠損の状況を確認する事にしました。

黒鍵は何とか破断面が荒れてなかったので、このまま圧着して修理出来そうです。クランプで固定して暫く乾燥させますが、この時にクランプをあまり強く締めすぎると、接着面が滑って失敗しますので、そっと柔らかく、そしてしっかりと固定します。そして暫く時間が経ったらクランプを外して、接着状況を見て問題の無い事を確認します。

その間、スイッチの切り替えパーツのビスの欠損状況を確認しました。

先ずはビスの形状を確認しようと、欠損しているビスの受け側をチェックすると、な、な、な、なんとビス穴に何か有る。嫌な予感!

しっかり確認すると、ビスは飛んで無くなったのではなく、折れて頭が飛んでしましまったのです。ビスの受け側に破断したビスが残っていました。さてさて、どうしましょう。

2024.06.05スイッチ切り替えのビスが断裂しているのをどうするか、思案にくれるまま時間が経って行きます。

断裂したビスを取り外す為には、鍵盤を載せる金属パーツ類を取り外す必要が有ります。それには二次災害のリスクも有り、何とか他の方法で出来ないかパーツ類をチェックする日が続きます。

そこで先ず、現在片一方のビスだけでとまっているパーツを取り外す為に、この隙間に入るラチェットを注文しました。

マイナスのドライバーも入らないので、六角レンチでビスを緩める事が出来るかどうか。

ただ、一つ怖いのは、金属パーツを止めるビスは固着している場合が有り、無理やり外そうとするとビスが折れて断裂してしまいます。断裂したビスを取り外す為に、もう一つのビスも折ってしまう危険性が有ります。

2024.06.06隙間用ラチェットが届いたので、早速ビス外しに取り掛かろうとしたら、これが何とビスまで届かないと来たもんだ。アチャー、やっちまったなあ・・・

せっかくなので、上部のプラスチックパーツを取り外す事にしました。このパーツはスイッチを切り替えた時の位置決めの為のパーツの様で、上側のオーバルホールで位置を決めてから、ビスを固定するようです。このパーツを外した状態で折れたビスを取り付けていた金属パーツを見てみると、なんと六角のジョイントナットのようです。金属パーツを取り付ける場合は、機械ネジを使用するのが通例ですので、もしかしたらと思ったらその通りでした。

そこで先曲がりペンチや色々な工具を使ってジョイントナットを回して行ったら、取れました。ヤッター!

つまり、裏側と表側に同じピッチの機械ネジで固定していると言う事ですので、この機械ネジが㎝なのかインチなのかを測って同じパーツが手に入れば、修理は一気に進みます。ただ、この手のパーツはかなり特殊な物なので、直ぐに探せるとは思えません。

ナットを取り外す事が出来たので両面を見てみると、下側はちゃんと穴が空いています。

しかし、上側は折れたビスの残骸が残っているので、これを取り除く作業をする事になりそうな予感がします。

機械ネジと云う事は、ネジ頭が飛んで無くなっているなら何とか外せるはずと思い、いくつかの工具を使って残ったビスを外す作業を行いました。初めはピクリともしなかったのですが、いろいろとやって行くうちに、アレ!動いた!!やはり勘は当たっていた。最後は先細ニッパでネジをつかんで、取り外すことが出来ました。

すると案の定、ジョイントナットで中は空洞。

何とか一歩を進めました。これから固定する為にビスを探すことになりますが、ピアノの譜面台のビスを合わせて見ましたが、径は同じでしたがピッチが違う為使えませんでした。

2024.06.07ピアノの機械ネジが合わなかったのですが、念のためビスの径とピッチを調べてみます。

M3のナットにメロトロンのビスを差し込むと、なんと入って行くでは無いですか。これならM3のビスを使えると思ったのですが、昨日ピアノの機械ネジが入らなかったと言う事は、ピッチが違うと言う事です。

M3のビスと並べてみると、やはりピッチが違う為、小さなナットならピッチが少し違っても入って行ってしまいます。

それならダメもとで、プラスチックパーツを止める部分にM3のビスを使って見ましたが、やはり途中から入って行きません。そんなに簡単ではないです。

2024.06.10暫く時間を置いて、作業の進め方を考えました。結果的にフレームを外さないとしっかりとした修理が出来ないと考えて、フレームを外す事にしました。鍵盤をセットするフレームは鍵盤の位置とテープをヘッドに密着させるパーツ(何というパーツか分かりません)の高さを変えない様に外せるかどうか、ビス位置やセッティングの状態を前もってチェックしながらビスを取り外しました。こちらはパーツ類が金属フレームにビス留めされているので、後で狂いが出る事は無さそうです。

フレームを外した事によって、作業は格段にやり易くなりました。

そこで、破損した箇所のビスを別のモデルから外して長さを確認しました。プラスチックパーツに取り付いていたビスと比べると、倍以上長さが違いました。折れていない方のビスを外そうとしましたが、かなり固着していてビスをねじ切ってしまう危険性があるので、今回はこのままの状態で作業する事にしました。

片方のビスを取り付ければ完了、と思いきや、ジョイントナットの下側がルーズになっており、ジョイントナット自体を下のフレームにしっかりと固定しないとグラグラと動いて、スイッチが正確に作動しません。おまけにジョイントナットを固定する下側のビスは、フレームの下を別の金属パーツで覆ってしまっているので、ビスの下側を固定してジョイントナットを固定する事が出来ません。一難去ってまた一難!さて、どうしましょう。

結局、意を決して残った方のビスを外す事にしました。この作業は一つ間違えればえらく面倒な事になってしまいますが、万が一ねじ切れてしまった時は、もう一台の方からビスを拝借出来ると踏んで作業を開始しました。一度ビスを締めて、緩め、又締めては緩めてを繰り返して、ビストルクを指に感じながらの作業で、何とか無事にビスを抜く事が出来ました。この作業はアコースティックピアノでのビスを抜く時の感覚が役立ちました。何回も力任せにビスを回して、ネジ山を潰したりネジを折ってしまったことが、今こうやって役に立つと言う事を考えると、失敗した事は後でちゃんと生きて来ると言う見本みたいです。

これで何とか第一段階突破!!

今日は出来る所までやろうと思い、鍵盤の取り付けも行いました。

鍵盤のストッパーを取り付けてみると、当初アッチ向いていた鍵盤が同じ状態となっています。

その鍵盤を外してから、鍵盤タッチをチェックすると、重さにバラつきが有りました。

メロトロンは鍵盤を板バネのスプリングで固定する仕組みなので、スプリングを止めるビスを少し緩めると鍵盤タッチが軽くなります。そこで全体の鍵盤タッチを同じテンションになるように合わせました。

さて、問題なのは白鍵2つのねじれの補正です。これはどうもスプリングの役目の板バネが変形しているのが原因のようです。5番の鍵盤をよく見ると、鍵盤の右側(この画像では左側)にすき間が出来ています。何か打撃の様な力が加わって、板バネがねじれてしまったのではないか考えます。

6番の鍵盤も5番程ではないですが、やはりスプリングと鍵盤木部との隙間が左右で若干違います。これを補正するのはかなり難しい作業です。このままでは鍵盤を傷めてしまうので、スプリングを鍵盤から取り外して補正をかけてみます。

ただ、5番の鍵盤のフロントホールブッシングが剥がれて無くなっていたので、先ずはブッシングを貼って行きます。

本日は取りあえずここまでの作業とします。

2024.06.13時間の合間をぬって、鍵盤の歪み補正をおこないました。初めに歪んでいた鍵盤を取り付けて動作確認した所、押した鍵盤が戻って来ないと言う不具合が発生しました。確認して行くと、張り替えた鍵盤ブッシングが膨らんで、フロントピンに干渉していたようですので、こちらはキープライヤーを使って、穴コロシをしました。取りあえず問題無く動作するようになりましたが、もしブッシングが厚くて、また鍵盤が戻らない不具合が発生するようなら、ブッシングを0.2㎜薄い物に貼り替えます。

その上で、鍵盤の歪み補正をしましたが、本体に取り付けて鍵盤おさえのバーをセットして取り付け位置を確認し、その後バーを外して、鍵盤を外して板バネの先端を補正すると言う作業を何回も繰り返さなくてはならないので、なかなか難儀です。

結局鍵盤の調整を進めて行くうちに、鍵盤の傾きと高さの両方の調整が必要な事が分かりました。傾きは板バネの歪みの修正が必要な事は分かりましたが、高さが下がってしまう原因がつかめません。全ての鍵盤は金属製の鍵盤おさえで高さが固定されているので、スプリング板の調整では高さを変える事は出来ません。

そこで改めて鍵盤おさえを外して、鍵盤の上面の形状を見てみると、なんと鍵盤が削られています。これは高さを揃えるために、高さの低い鍵盤の上面を削って、キートップを合わせるようになっていました。

他の鍵盤も幾つか微妙に上面を削って、高さ合わせをしているようです。成る程、割とラフな手法ですが、この手法なら確かに手っ取り早く調整出来ます。

2024.06.14細かな調整は取りあえず後に回す事にして、音が出るかどうかの確認を行いました。当初低音部側の6音位は発音しなかったので、これはダメかなとも思いましたが、中音部から高音部にかけては何とか発音しましたので、メロトロン全体の不具合ではなく、各鍵盤毎のセッティング不良と考えて、ローラーの当たり具合とヘッドの当たり具合を調整して行くと、少しずつ発音するようになりました。

全体を大まかに調整して行くと、不揃いや発音不良は有りますが、何とか全部の音が出る事を確認出来ました。

トラックセレクタースイッチも試してみると、何とか機能しているようです。この後全体の調整作業に移って行きますが、構造と鍵盤の取り付け高さやローラーの当たり角度等、演奏に影響を及ぼす可能性が有るパーツのセッティングについて、少し時間をかけて考えてから作業を行う事にします。

2024.06.15取りあえず各音色の出音をチェックしてみました。中音部の発音でしたが、なかなか発音が難しいです。

各鍵盤の調整もまだ完了していない為、鍵盤が幾つか傾いていて弾きにくいです。

音は出ると言った状況で、細かな調整が必要です。ローラーの当たりが弱いと発音の初めに音の揺らぎが出てしまいます。またヘッドの当たりが弱いと発音不良を起こしたり、逆にヘッドの当たりが強いとテープを強く押す事でテープの巻き上げスピードが遅くなってしまい、音程が一瞬下がってしまいます。その中間を2本のビスの調整で行うのは、アナログの極地と言っても良いのではないでしょうか。デジタル楽器には無い世界観です。一言で言えば難しい。

2024.06.19一通りの音色調整を行ってみました。メロトロンと言う楽器は鍵盤式テープレコーダーとでも言ったら良いでしょうか。それも調整箇所はピンチローラー及びテープのヘッド当たりのスプリングテンション、それに鍵盤スプリングの締め付けトルクによる鍵盤の重さ調整の3か所で全ての音色とタッチ感を調整する仕組みのようで、本当にしっかり調整するのは至難の業です。

おまけにピンチローラーセットの板バネが鍵盤にビス2本で取り付けるシステムなので、鍵盤側の木材に反りが出ると、必然的に鍵盤が傾く事になります。また、今回の様に外部から大きな力が働いた時は、板バネ自体が捻じれてしまい、その結果鍵盤が傾いてしまいます。

続く

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