Rhodes piano Mark 1 の修理、メンテナンス 2023年12月29日
お客様が来店して、当社在庫を見て頂きました。その上で、Mark1Stage Modelをご購入頂く事になりました。当社に入って1年以上置きっぱなしだったので、いざ音出ししようとセットしても音が出ません。一つはプリアンプの配線が断線していました。こちらはハンダ付けしましたが、それでも音が出ません。
そこでピックアップをバイパスして繋いでみたら、沢山のピックアップ切れが有りました。その数23個、これからピックアップの交換作業となります。
その他にもピックアップをチェックしてみると、かなりサビが浮いていましたので、全部綺麗にします。
mark1でこれだけピックアップが飛んでいるのは珍しいですが、サビの状況を見ると置いていた環境の影響が大きいようです。後々トラブルが発生しない様に、通常より細かくチェックして行きます。
2023.12.30先ずは切れているであろうピックアップを外して行きます。外した状態で抵抗値を測ってみると、やはりみんな切れていました。1個位正常なのが無いかな、あったらラッキーと淡い期待を込めて抵抗値を測りましたが、全て見事に切れていました。
いよいよ、ピックアップコイルの巻き直し作業が年明けの初仕事で夜なべ仕事になりそうです。ピックアップコイルは巻き始めと巻き尻りの処理が重要なので、外したピックアップコイルを改めて巻き直します。新しい部品を購入して交換した方が手っ取り早いのですが、新しい部品の巻き方がちゃんとしているかどうか分からないので、自分で巻き直します。
2023.12.31大晦日ですが、間に合わないといけないので、午後からピックアップの巻き直し作業を行いました。1個1個巻いては抵抗値を測る作業で、1個巻くのに20分位かかります。
結局1時間に3個~4個のピックアップを巻き直して、今日一日で10個仕上げました。次は年明けに作業します。
2023.01.03正月返上してピックアップの巻きなおしをしました。明日は本体に取り付けます。
2024.01.04ピックアップ23個を交換しましたが、これでもジャンプ接続しないと音が出ません。今日は疲れたので、明日改めてピックアップの断線をチェックします。
2024.01.05再度ジャンプ接続してピックアップの状態を調べてみました。すると、先ず5個のピックアップが飛んでいるのが確認出来ました。
その後改めてピックアップの抵抗値を測ってみると、なんと12個が飛んでいます。何とも心が折れそうですが、気を取り直して不足分のピックアップの巻き直し作業を行って、全部で35個のピックアップを交換しました。73KEYのほぼ半分です。
これで何とか全部の音が出る様になりました。この後、ハープ調整とボイシング調整、調律が残っています。明日これらの作業を行って何とか仕上げたいと思います。
2024.01.06先ずはハープ調整、ボイシング調整、調律と進めて行きました。ハープ調整とボイシング調整を終えて調律に移った時、高音部で調律用のスプリングがタインから外れてどこかに飛んで行ってしまいました。
鍵盤も外してケース内を捜索しましたがスプリングは見つかりません。仕方が無いのでスプリングは在庫のトーンジェネレーターから外して使う事にして、せっかく鍵盤も外したのだから棚板やケース内の掃除と、バランスピン、フロントピンの研磨を行う事にしました。
ダンパーレールも外して、ダンパーの動きが良くなるように両方のダンパーピンもサビ落としをしておきました。
フロントピンはサビが浮いている所はスチールウールでサビを落とした後、潤滑用ルーブで処理します。フロントピンも同様の作業をしました。
この作業をするかしないかで、今後のタッチの滑らかさが全く違ってきます。午前中でここまでの作業を終えて、後は午後から再開します。
午後は鍵盤のバフ研磨から始めました。キートップをバフ研磨する事で見違えるくらい綺麗になります。
木口もバフで汚れを落として綺麗にします。Rhodes Pianoにとって見た目も大事な要素です。
バフ研磨する時に鍵盤のブッシングに目が行くのですが、白鍵の一つのフロントブッシングが剥がれて欠如していました。
鍵盤が動かなくなる訳では無いので、バフ研磨をしなければ見落としてしまう所でした。ちゃんとブッシングを貼りました。
これで最終調律に入りましたが、2音だけ音色調整が綺麗にあがりません。どうしてもちゃんとした発音にならないので色々調べて行ったら、なんとピックアップの断線でした。昨日交換した物とは別の物ですが、隣のピックアップを交換した時に、ワイヤーを外す為にハンダを当てた箇所でした。多分ハンダの熱で弱っていたピックアップが断線したのでしょう。直ぐにピックアップを外して、巻き直しました。これで交換したピックアップは37個になりました。まあ、切れるんであれば今のうちに切れてくれた方が良いです。
このmark1は背面のロゴが欠落しています。何となく寂しいので当社の部品取り用の在庫からはずして取り付けました。
ちょっとキズがあったり汚れていたりしますが、やっぱりロゴは有った方がカッコイイです。この後、ペダルの動作確認を行いました。時間的にギリギリではありますが、調律の残りは明日お客様が来店する前に完了させます。
2024.01.07全ての作業が完了しました。なかなか手強い相手でしたが、それだけに勉強になる内容も多かったです。やれることは全てやり切った感が有ります。
正月返上となりましたが、正月は特にやる事も無いので、最終日の午前中に仕上げられたのは私にとっても大変有意義な年末年始となりました。今回の激戦の跡です。私の家内からは、「あなたは片付けが出来ないだけよ!」といつもお叱りを賜っています。有難うございます。
お客様がご夫婦でみえました。Rhodesのセッティング方法や中の機構をご説明して、いざ本体を乗せるとなった時、車はオフロード仕様のジムニーでした。これ、本当に乗るの?ちょっと不安でしたが、やってみる物です。
助手席とその後ろのシートを倒して乗りました。なんでもチャレンジは大切です。おまけに、奥さんとご主人の二人が一緒に乗って行くと言うので、人間やれば出来るのだと改めて教えられました。
お客様から自宅に無事セッティング出来たとご連絡を頂きました。こうやって大切に使って頂けると、修理する方もとても嬉しくなります。末永く大切にして下さい。この度は大変有難うございました。
終わり
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
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