Rhodes Mark1 Stage Piano Maintenance 2023.01.29

鍵盤が戻らない Rhodes piano Mark 1 の修理、メンテナンス 2023.01.29

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2023年1月29日 鍵盤が戻らないという不具合の修理依頼を頂きました。

早速チェックしてみると、中音部から高音部にかけて、数鍵戻らない鍵盤が有りました。

さらに細かくチェックすると、10KEY程が戻らない、又は動きが悪く緩慢でした。

鍵盤の動きを調べる前に、全体のチェックをした所、ぱっと見で鍵盤のガタツキが気になります。

Rhodes 73KEY用に作った鍵盤定規をあてて調べてみると、高さの不揃いが有ります。

それに加えて、鍵盤の傾きも有りました。

こちらは鍵盤の反りが原因の様です。

また、鍵盤とケース前面の隙間が、低音部と高音部で違っています。

低音部の隙間は目立ちませんが、高音部はかなり隙間が空いていました。

メジャーで計測した所、高音部の隙間は約6㎜

それに対して、低音部は約2㎜で、4㎜の差が有ります。

これが人為的に変更されたものなのかどうかは定かでは有りませんが、

可能性として考えられるのは、高音部のハンマーがダンパーと干渉して鍵盤が戻らなくなる症状が有って意図的に変えたか

筬を固定しているビスが何らかのショックで曲がったかのどちらかではないかと想像します。

次に、全体のチェックの為に鍵盤を外して、内部を見ると、ホコリと異物の混入が有りました。

また、鍵盤の高さを決めるパンチングに紙パンチングが加えられて、高さの調整をした跡が有ります。

中音部には、ゴムブッシュの様なパーツが乗っていました。

先ずは、棚板を綺麗にお掃除するところから始めます。

全ての基本は出来たての新品の時の様な綺麗な状態でチェックする事です。

戻らない鍵盤のバランスピンとフロントピン、そして鍵盤のブッシングを確認

すると、バランスピン、フロントピン共にざらつきやべとつきがあり、サビも発生していました。

取りあえず戻らない鍵盤のパンチングを外して、バランスピン、フロントピンを磨いあた後

仕上げ処理まで行ったら鍵盤の動きは解消されました。

余談ですが、以前何らかの調整をしたようで、通常はパンチングクロスが上面にあるのですが、

こちらは紙パンチングで高さ調整をしたようで、紙パンチングがそのまま上面に残っていました。

紙パンチングは厚さによって色が違い、色とりどりと言った状態です。

問題が有るわけでは無いのですが、鍵盤を外す時に一緒に紙パンチングがくっついて来ることがあるので、

大着はせずに、パンチングクロスを上面に置いて、元の状態にすることを心掛けています。

続いて、鍵盤側のブッシングクロスのチェックをしました。

中音部の一番使用頻度の高そうな鍵盤をチェックしましたが、

バランスホールのブッシングクロスの摩耗も無く鍵盤に不具合はなさそうです。

フロント側もチェックした所、ブッシングの摩耗は有りませんでした。

ただし、ブッシングが膨らんで鍵盤抵抗になる場合が有りますので、

鍵盤の穴コロシは行っておいた方がよさそうです。

一日時間が取れたので、早速ピンの磨き上げに入りました。

鍵盤はパンチングの上面が鍵盤と接するポイントなので、パンチングを取り外して研磨します。

研磨に使用するのは、0000番のスチールウールと、金属クリーナー、そしてシリコン系の防錆対策剤です。

先ずはスチールウールでサビや汚れを落とし込んで行きます。

この時、1本1本指で感触を確かめながら作業して行きます。

ざらつきやキズが有る場合は、別途対処します。

案の定、高音部のバランスピン1本に、何らかのキズが有り、そのままでは鍵盤側のブッシングを傷めてしまいますので、

別途キズ落としと研磨を行いました。

スチールウールで研磨した後は、掃除機でスチールウールの粉を吸い取り、

その後金属クリーナーで磨いてから、乾拭きし、最後にシリコン剤で仕上げます。

1本のピンを3回磨く訳ですから、こちらのRhodes Pianoの場合、3×73で219回

それにフロントピンまで数えると438回磨く事になるんですね。

まあ、それだけで1日仕事です。

フロントピンを磨いている時に、筬(おさ)が浮いていてバウンドしているのを発見しました。

筬とは英語でキーベッドの事で、鍵盤を乗せる枠組みの事です。

以前依頼された修理の時も、筬の浮きが有り、依頼者の方から何とかしてと言われた事が有るのを思い出しました。

筬の浮きの動画

以下は参考画像で、以前修理依頼されたRhodes Pianoの画像です。

参考画像 以前修理したRhodes Pianoのキーベッドの浮き

金尺が入ってしまうほどの隙間が有り、演奏時にフワフワしていたそうです。

参考画像 キーベッドの浮きを抑える為に、ケース本体とビス止め

そこで、筬と本体をビス止めして、固定しました。

木ネジでは弱いので、貫通させて鬼目ナットで裏側から固定しました。

参考画像 本体は鬼目ナットを取り付けて、ビスを固定しました。

フロントピン、バランスピンの研磨、クリーニングが終わりましたので、次に鍵盤の穴コロシに移ります。

穴コロシはフロント、バランスそれぞれのスロットのブッシングをキープライヤーでつぶしたり

バランスピンとバランススロットのはまり具合が適正な状態になるように調整する作業です。

いずれもやりすぎると、鍵盤ガタの原因になりますので、一つ一つ確認しながらの作業となります。

ピンの表面が滑らかになったので、動きが格段にスムーズになりました。

しかし、丸一日かけても、ここでタイムリミット。

次回、この続きを行って行きます。

時間が取れたので、筬の固定をしました。

前回同じ作業を行っていたのですが、ビスの径や長さを忘れてしまい、再度測り直しました。

ビスはM5サイズを使用、長さは35㎜でした。

鬼目ナットもM5サイズを使いましたが、裏板に打ち込む時の外径は6.5㎜でした。

5㎜穴を貫通させた後、裏側から6.5㎜のナット用の穴を10㎜位まで開けて、鬼目ナットを打ち込みます。

筬側は皿面取りして、ピッタリと合うように皿穴をあけました。

当初ビスは30㎜と思っていましたが、30㎜だとナットに届かず、40㎜だと裏側が突き出てしまうため、

35㎜のビスを用意しました。お陰様で寸法もピッタンコでした。

鍵盤整調も済ませて、全部の鍵盤を本体に戻しました。

タッチは格段に良くなり、安定しました。

やはり、やっただけの事はそのまま帰って来ると実感出来る時でした。

ただ、音色と音量にバラつきが有ったので、全てのKEYの音色調整をしました。

中にはトーンジェネレーターのグロメットが本体に融着しているものも有り

一度トーンジェネレーターを外してから調整しなければならない所もありました。

また、音色と共に音量の凸凹も調整しましたので、かなり弾きやすくなったのではないかと思います。

鍵盤タッチ関連の調整を全て終えました。

タッチも軽くなり、演奏し易くなりました。

後は、ピッチをA=441に変更して、全ての作業が完了となります。

ピッチ変更はかなり時間がかかるので、完成は来週以降になります。

2023.02.06 修理の為の時間がスムーズに取れて、鍵盤修理からピッチ変更、音色、音量の調整まで順調に進める事が出来ました。

一応これで全作業は完了しましたが、Rhodes Pianoと言うのはお納めした後に、環境変化で何が起こるか分かりません。

暫くは様子を見ながら使って頂く事になります。

2023.02.09無事に納品完了しました。セッティングして試弾して頂いた時に、高音部の黒鍵が一つ何かに引っ掛かって

弾けませんでした。外してチェックした所、フロントブッシングが剥がれかけていました。

出荷前には問題なかったので、何故そうなったかは不明ですが、直ぐに治して事なきを得ました。

有難うございました。

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