ローズピアノ マーク2 スーツケース 73鍵モデル 浜松からの修理依頼 2023.09.09
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
2023.09.09浜松市のお客様のお宅へ伺いました。1ヶ月程前の8月17日にお客様からRhodes Pianoの修理のお問い合わせを頂き、いろいろとご相談する中でちょうど浜松へ行く用事が入ったので、それに合わせて伺いました。現場で電源を入れてみましたが、音が出ませんでしたので、修理のご依頼を頂き、お預かりする事になりました。
2023.0913工房で本体をセットして電源を入れてみましたが、やはり音が出ません。そこで、キーボードとアンプのどちらに原因があるのかを調べる為に当社の備品のキーボードをお預かりしたアンプにつないでみると問題なく音が出ました。それではキーボードに問題が有るのか、もしくは5ピンケーブルに問題があるのか、それぞれケーブルを変えて接続したりしました。すると何回か接続を変えて行くうちにキーボードから音が出るようになりました。これでは正確な原因が分かりませんが、どうもプリアンプに不具合が有るようです。取りあえずこの状態でピックアップの飛びやプリアンプの動作を確認して行きます。
mark2はピックアップが飛びやすいのですが、こちらのモデルも8個(14A#、15B、26A#、46F#、56E、64C、68E、74A#)ピックアップ飛びがありました。しかし8個位の場合、全体の音が出なくなることは有りませんので、やはり原因はプリアンプの様です。
ハンマーチップの欠損(36G#)も一つ有りました。
電源スイッチも固着してON-OFFは電源コードの抜き差しで行っていました。こちらも交換した方が良さそうです。
鍵盤も経年によるブッシングクロスのへたりが有るようで、中音部付近はガタツキが大きいです。
バランスブッシングはかなりへたっています。
フロントブッシングも同様な状態です。
23.10.03先ずは鍵盤の調整下作業から開始しました。鍵盤調整は一番時間がかかる作業となる為この作業からのスタートとしました。
下作業と言っても鍵盤の木場の汚れ落としやキートップの汚れ落とし、研磨作業と1日作業となりました。
極力より良い状態に持って行きたいので、こう言った作業も手を抜く事無く進めて参ります。
2日目にブッシングの剥がし作業を進めました。こちらは通常は蒸気をあててブッシングを剥がすのですが、Rhodes Pianoの鍵盤はアコースティックピアノの鍵盤より柔いので、電気ごてを使って剥がします。
手間と時間はかかりますが、修理後の鍵盤の変形発生やトラブル防止の為にこの方法を用います。
鍵盤をはぐってみると、中にはなかなかのホコリが溜まっていました。
こちらは掃除機で綺麗にしました。すると色々と問題点が見えて来ます。一つは鍵盤のキーベッドの浮きです。これは今後対策を講じて行きましょう。
またハンマーのゴムチップがかなりえぐれていたので、こちらは交換して行きます。
キーポジションによって、番手が異なって来るので、マスキングテープで印を付けて間違いの無いようにします。
当初のオーダーは欠損しているゴムチップの取り付けでしたが、かなり多くのゴムチップが凹んでいたのでそれは交換しました。
結局一音のみ交換すると音色がそこだけ変わってしまう為、ブロック毎に交換となります。
結局殆ど交換となりました。
2023.10.10キーピン磨きを行いました。こちらはサビやキズが少なかったですが、粘るような汚れが付着していましたので、全て手作業でパンチングの取り外し、研磨剤での磨き込み、研磨剤落とし、仕上げ材の塗布、乾拭き、パンチングの戻しを繰り返して行きました。
バランスピン、フロントピン共スムーズな手触りになりました。
午後からはブッシングの貼り替えの為の下準備です。ブッシングは1.3㎜、1.5㎜、1.8㎜と有りますが、鍵盤とピンの感じが1.5㎜がピッタリしそうなので、今回は1.5㎜のブッシングクロスを使う事にしました。そこで、まず中音部の鍵盤2つを1.5㎜のブッシングクロスに交換してテストしてみます。明日本体にセットして動きや抵抗をチェックして、良かったら全ての交換作業に入ります。
1.5㎜のブッシングクロスに貼り替えた鍵盤を本体にセットして抵抗や動きをチェックしました。問題無いのでこれから全てのブッシングクロスの張り替えを行って行きます。
途中、抵抗が大きい鍵盤はキープライヤーを使ってブッシングクロスを締めて行きます。
2023.10.14全ての鍵盤の張り替えが終わりました。週明けに本体にセットして調整をして行きます。
2023.11.10 10月後半に本体に鍵盤をセットして動作確認を行おうとしたところ、音が出たり出なかったりの症状が続きました。パワーアンプもプリアンプも電源供給は問題無く、アクセサリー端子を直繋ぎすると音が出るのでプリアンプのどこかに不具合が有るのですが、チェックをしようとすると音が出てしまい不具合の原因がつかめません。また、ビブラートのインジケーターはランプがついて動作しているのですが、実際にはビブラートが効いていません。そんな状況が続いて先に進めませんでした。
そこで当社の在庫パーツを繋いで動作確認をした所、ビブラートは効きましたが、片チャンネルの音が出ていません。これはスピーカーが飛んでいる可能性が有ります。ただ、オリジナルのパーツを取り付けて見ると、やはり音が出たり出なかったりが続いているので、この原因を潰さないと先に進めません。
じっくりと1日時間をかけて追って行かないと分からないトラブルで、おまけに暫くは問題無く音が出ています。何とも厄介な症状でしたので、問題解明は原点に戻れ!で、入力段から一つ一つのケーブルやハンダ、パーツ類を調べて行きました。そうしたらやっと分かりました。灯台下暗しで、トーンジェネレーターからプリアンプに接続されているシールドケーブルの内部断線が原因でした。もっと早くに見つけていればこんなに苦労しなかったのですが、原因が見つかった事でやっと先に進めます。
2023.11.11今日も回路図とにらめっこしながら1日かけてメンテナンス作業を行いました。途中色々とトラブルが有りましたが、お陰様で不具合を解消して、音は問題無く出る様になりました。
ビブラートもプリアンプ基板のハンダ不良と断線が有りましたが、復活しました。ハンマーチップも交換しているので、全体的に音色は安定しています。
しかし、ビブラートをONにした時に、片方のスピーカーから音が出ていない為、片チャンネルだけが機能している状態です。こちらはスピーカーが飛んでいるのか、配線の問題なのか次の作業で確認して行きます。願わくばスピーカーが飛んでいない事を祈ります。
2023.12.01交換のためのピックアップの制作に時間がかかってしまい、暫く間が空きましたが、本日ピックアップの交換を行いました。
当初8個飛んでると思っていましたが、再度確認した所7個でした。こちらは清算時に調整します。この後いよいよアンプ関係とスピーカー関連の修理に入ります。年内に完了出来るようスピードアップして参ります。
2023.12.02今日は午前中からアンプ関連の修理に取り掛かりました。先ずは片方のスピーカーから音が出ていない症状の確認をしました。
延長コードを繋いで音の確認をしましたが、やはり片方のスピーカーから音は出ていないようです。
スピーカーの交換作業の前に、電源スイッチの交換をしました。こちらはコードがかなり固く固着していたので、先ずはドライヤーで熱を加えて、コード類の弾性を高めてから作業を行いました。
元々の配線をマスキングテープでまとめておきます。狭いスペースでなおかつ配線コードがかなり固くなっているので、二次災害を防止するために1本1本マーキングしておきます。
スイッチは無事に交換出来ましたが、パイロットランプが付きません。どうもパーツの仕様が変わったようです。配線を再度外しての作業はリスクが大きいので、この状態で使用して頂く様にお願いします。
次に片方のスピーカーの音が出ない症状ですが、先ずはスピーカーのチェックをしました。
交換用のスピーカーも用意して準備しましたが、配線を見ると1本外れています。これが原因なのかと思いながらスピーカーに繋いで見ると、ターミナルがサビて劣化して割れてしまいました。別のコードに交換して音出しをしました。このスピーカーコードが原因ならこれで音が出るはずなのですが、全く変化が有りません。
そこでアンプのチェックを行いました。すると片方の基盤の不良が原因のようです。ただ別のアンプに基盤を移設して動作チェックをしても症状が変わりません。これは厄介な事になりました。
不具合の原因が何処にあるのか分からないまま、時間が経ちました。とにかく原点に戻って一つ一つ原因究明する為に、簡単な図面を作って一つ一つ問題無い部分を潰して行きました。先ずは、①のプリアンプと②の5ピンケーブル。こちらは別のアンプに繋いで音出しをしてみて、問題無い事が確認出来ました。次に④のスピーカーですが、こちらはアンプからのシールドラインを左右入れ替える事で、それぞれのスピーカーから音が出る事が確認出来ました。すると、残るはパワーアンプとなります。
しかしパワーアンプと言っても、配線なのかコネクターなのか、基板なのか、パワートランジスターなのか幾つも原因の要素があります。そこで当社在庫のパワーアンプに繋ぎ変えてみても、同じ症状が発生します。そうするとやはりスピーカーかスピーカーケーブルの可能性が出て来ますが、配線を左右切り替えるとそれぞれ音が出ます。もう訳が分からん状態です。
しかしどう見てもパワーアンプの不具合であることは確かです。そこでもう一度基板の再ハンダとパワーアンプ内の配線の見直しと通電チェック、コネクター関係の接触不良のチェックとケイグを使っての接点復活を行いました。最終的に基板も当社在庫品の問題無い基板に入れ替えた所、やっと、やっと無事に左右の音が綺麗に出る様になりました。
これでやっと一件落着かと思って、暫く時間を置いて再度スイッチONすると、また同じ症状が出て来ました。さっきはアンプに関しては問題無い事を確認していましたので、再度プリアンプから動作チェックをして行くと、なんとビブラートのINTENSITYのボリュームを回して行くと、ガリと共に音が出たり出なくなったりの症状が出て来ました。よくよく考えるとINTENSITYは音を左右に振り分ける機能ですから、ここで片方に信号が行かないと言うトラブルは出ます。加えてアンプの基盤も一枚不良でしたから、それが複合的に動作したりしなかったりで、今回の症状が出ていたようです。
INTENSITYのボリュームポッドにケイグをしみ込ませてガリの除去と接点の復活を促進します。この作業は完璧とは言えなくても、何回も何回も繰り返して行く事で改善します。ただ、接点復活剤を一気に吹き付けると他のパーツへの影響も起こりますので、ちょっとずつ、何回もしみ込ませて、ボリュームを回す作業を繰り返しました。
これでやっと全ての問題が解決して、ちゃんと発音するようになりました。後は暫く時間をかけてエイジングで様子を見ます。
2023.12.16長かった修理とメンテナンス作業も最終段階を迎えました。調律と音色調整を行って、いよいよ来週お納めとなります。発音もビブラートも綺麗出ていて嬉しくなります。もう一息で完成です。
2023.12.18出荷前の最終調整を行っています。鍵盤のブッシングを交換しましたので、再度鍵盤の動きを見て、動きがシブく感じる鍵盤のブッシングをキープライヤーを使って潰します。こうやる事で後日鍵盤が戻らなくなる等の不具合を防げます。
その後、調律とハープ調整、ボイシング調整を済ませて、全ての作業が完了しました。お預りから3か月少々かかりましたが、お客様のご要望に可能な限りお応えしたつもりです。今日一日通電チェックして問題の無い事を確認致しました。12月20日にお客様の元にお戻し致します。
2023.12.21スケジュールが一日遅れましたが、無事にお客様の元に戻りました。有難うございました。
終わり