Rhodes piano Mark Ⅱ Stage Model 売約済み品メンテナンスとハーフカバー制作 2022.09.15
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
2022.09.15カバー作成の為の採寸を行いました。
この木材板は18㎜厚の集成材です。シンセサイザーを常時置くのであればこの位の厚みが欲しいと思います。
採寸は板の上面からの計測ですので、これに+10㎜位のクリアランスが必要となります。その為全体の高さはメジャーで計測した値に+10㎜を加えた数字と考えて下さい。この画像ではサイドのケース上面から130㎜程のクリアランスに天板面が来ます。
この画像は前面のパネル上のクリアランスです。約50㎜+10㎜で60㎜程度になります。
こちらは背面の画像です。こちらも40㎜+10㎜で、約50㎜のクリアランスとなります。
こちらは倉庫にあった改造したカバーです。元々のRhodes pianoのカバーをそのまま加工したものです。
取り付けた感覚はこのような感じです。奥行き390㎜、間口1140㎜見当です。
こちらのハーフカバーはスーツケースモデルの天板で板厚が薄く、計測値ではありませんが10㎜~15㎜位の厚さです。このままでは上にシンセサイザーを乗せると、中央部がかなりたわんでしまうので、アルミ製の補助フレームを取り付けています。
画像では分かりにくいですが、中央部がたわんで下がっています。アルミフレームが取り付けて有る部分の板の厚みを計測したら、なんと6㎜厚でした。これはフタとして使用する時に板厚を厚くすると全体の重量が重くなるのと、上に重量物を載せる事を想定していないからでしょう。
このハーフカバーをセットした場合、白鍵上面からの高さは160㎜位です。
また、再度のフレームからの高さは135㎜見当です。
残念ながら、こちらの改造ハーフカバーは技術者の所有品で、見本として取っておいた物で売り物ではありませんでした。その為新規に制作する事にしました。
先ずは見本のカバーの採寸をし、木取りを考えて材料を購入しました。上に乗せるシンセサイザーの重量と、乗せたままでずっと使う事を考えて元のカバーより厚みのある木材で制作する事にしました。
パーツ類を全て外し、サビの発生度合いに応じて、スチールウールを使ったりサンドラバーを使って下処理します。その後全ての金属パーツはバフ研磨して磨き上げます。ゴムやプラ類はクリーニング後メンテナンス剤で保護します。
本体のトーレックスもクリーニングして金属パーツ類を取り付けて行きます。ピカピカに光っている金具はRhodes pianoの美しさを引き立てます。
次に鍵盤を外して、鍵盤調整に入ります。
鍵盤にはNOTEがナンバリングされています。
鍵盤の調整前に、バランスピンやフロントピンの滑り具合を指で触って確認しました。すると、何かベトツキが有り、このままの状態ではブッシングクロスが摩耗し易くなり、鍵盤の動作不良や鍵盤のガタツキが発生する危険性があります。
ここは全てのピンを金属クリーナーで汚れ落としをして、最後に乾拭きして抵抗を無くします。地道な作業ですが、こんな作業が後々の弾き具合に影響して行くので、しっかりと作業していきます。
鍵盤はバフ掛けしてから穴コロシをして仕上げました。鍵盤の動きはとても良くなりました。
採寸した寸法通りにすみ出しします。天板部分は奥行き400㎜ですので、間口1140㎜でカットします。
サイドの板については、長辺を160㎜+40㎜にカットした部材を400㎜にカット、その部材を121.5㎜×36.5㎜に斜めにカットします。 実際には丸鋸の刃の厚みが2㎜程有りますので、実際にはカット前にもう一度測って、誤差を修正します。
天板部、サイド板部を丸ノコでそれぞれカットしました。その後天板部の角はルーターで面取りまで終わらせました。
本体に乗せて、左右、前後の水平を測ります。殆ど問題無い範囲でした。
これからサイドと奥の板を接着、仮どめします。
2022.10.30、お客様がドイツTines & Reeds社のSUITCASE PREAMP for Rhodes Mark2 Stage Pianoを持ってご来店。
このプリアンプはステージモデルのプリアンプをそのまま入れ替えが出来て
ステージモデルをスーツケースモデルと同じかそれ以上のエフェクトをかけられるモデルに変える優れものです。
ステージモデルをスーツケースモデルにチェンジさせるので、電源供給も必要になります。
電源は左サイドにスマホを厚くした位のケースに、ACを接続します。
取り付けた時の状態はこんな感じです。
トレモロ以外に、リバーブやエコー、フェーズシフター等のエフェクターも内蔵されており
その効き具合は中々なものでした。
2022.11.10 続いてピックアップコイルの交換に入ります。
ピックアップコイルはモデルによっては断線し易く、このモデルも13個飛んでいました。
以前交換した跡があるのですが、それでも結構な数飛んでました。
交換するピックアップは、15B、20E、25A、32E、37A、39B、45F、55D#、57F、63B、74A#、76C、78Dの13個です。
コイルは手巻きで巻き直して使います。
その後新たに73Aのピックアップも飛んでいたので、全部で14個交換しました。
ピックアップ交換も終わり、全部の音が問題なく発音するようになりました。
ここからはいよいよ最後の仕上げに入ります。
先ずは、トップカバーの背面にコード類を通す25㎜Φの穴を開けました。
これでコード2、3本は問題なく通せます。
それから、プリアンプパネルを開けられるように改造して欲しいと依頼されましたので
色々と方法を考えましたが、プリアンプそのものを引き出すとなると
中の基盤や配線を傷める危険性があります。
そこで、前面パネルをそのまま手前に引き出して、
プリアンプをのぞける様にする方法が安全ではないかと考えました。
ただ、この方法の場合、プリアンプの部品が本体に干渉してしまうので
ストッパーを取り付ける必要が生じます。
ここからはもう少し思案します。
トーレックスの張り込み作業に入りました。
先ずはサイドから張り込んで行きます。
角の張り込み処理が難しく、一点一点クランプを使って張り込みます。
片方の張り込みが終わったところで一日目は終了です。
それぞれサイドの張り込みに1日かかりました。
続いて、メインのトーレックスの張り込みに入ります。
こちらも位置出しと張り込みスタートをどこから始めるか考えましたが、
背面を決めて、弛みの出ないように上面、前面と張り込んで行きます。
トーレックスの張り込みは慌てるとろくなことが無いので、しっかりと乾燥時間を取って張り込みます。
2022.11.18トーレックスの張り込みが完了しました。
これから1日乾燥させて、細部の仕上げを行います。
パネルの開閉については、基盤のぶつかり破損防止のために両サイド内側にストッパーを付ける事で対応します。
パネルを開けた時に、基盤が本体に干渉するのをこのストッパーで防げるハズです。
取り付けは明日行います。
2022.11.19本体左右にパネルのストッパーを取り付け、カバー背面にヒンジ金具を取り付けました。
トップカバーを止める背面のヒンジは、元々付いていたものを使いました。
パネル用のストッパーはピアノに使われていた硬い木材を加工して作りました。
パネルを開いた時には、プリアンプのパーツが本体に干渉しないように
また、パネルを戻した時にパネルの位置が奥にずれないように工夫しました。
試弾後暫く通電してエージングをしています。
問題が発生しなければ、お客様に試弾頂き、納品となります。
これでご依頼頂いた全ての作業が完了しました。ご依頼から完成まで、約2か月の作業でした。
2022.12.03無事にお客様の元にRhodes pianoをお届けして、設置する事が出来ました。
お客様のご要望で、Rhodes pianoの上にシンセやキーボードを乗せて弾きたいが
重量が気になるとの事でしたので、Rhodes pianoの脚は使わず、
耐荷重100㎏のRoland KS10Zと言うスタンドをお客様が購入されて、
それにRhodes pianoをセットする事になりました。
最初のお問い合わせから約3か月かかりましたが、無事にお納めまで完了出来ました。
有難うございました。
2023.03.01お納めから3か月が経過した時に、お客様より特注のカバーの中央部がやや下がって来ているので対応して欲しいとメールを頂きました。
画像と共に設置状況が送られて来ましたが、「特性Coverへの荷重計 46.83kg」と有りました。さすがに40㎏超の荷重が常時かかるようですと、厚めの木材を使用したとしても経年で中央部が下がって来ます。そこでカバーをお預かりして補強する事にしました。
先ずは反りを少しでも補正する為に、約5㎏の重し(工具カバン)を乗せて時間をかけて平らに戻します。
アルミのアングルを取り寄せてカバー内寸に合わせてカットしました。
取り付けのビスの長さをどの位にするか、現物合わせで採寸しました。テストに使ったアルミアングルはカットした残りの部分です。穴あけや面取りでどのように施工出来るか実験も兼ねてビス穴を開けてみました。
ビスは16㎜と20㎜を使ってみましたが、どちらも貫通する事はなさそうですので、本体の状況を考えながらどちらにするか決めて行きます。
2023.04.22 アルミアングルに位置出しをして3㎜のビス穴を7カ所開けて行きます。
ビス穴を開けたら、ビスの皿の部分の面取りをして行きます。
アルミアングルに開けたビス穴をカバー本体にマーキングします。
3か所をキリで位置決めして、ドリルでカバー本体にビス穴を開けます。
前部で7カ所ビス止めしました。
アルミアングルとカバー本体に浮きや隙間が無いか確認します。
しっかりと密着していました。これで一応完成ですが、お納め日までビスの緩みや変形が起きないかエイジングをかけて様子を見ます。
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