Rhodes Piano Mark 1 88Key3Knob Type Maintenance 2023.10.06

ローズ ピアノ マーク1 88キー3ノブタイプ 修理 2023.10.06

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2023.10.02都内のお客様からのご依頼でRhodes Piano Mark 1 Suitcase 88Key 3knobタイプをお引き取りしました。

こちらのモデルはMark1でも初期のモデルで、アンプも後期のモデルとは違います。

取りあえず電源を入れて動作確認をしましたところ、音は出ました。ただし正常に動作しているかどうかは定かではありません。トレモロの左右の音量バランスやヘッドフォーンでの音量の低さ等、何かしらの問題が有る事も考えられます。

鍵盤をあげて内部をチェックすると、経年劣化はあるものの、何とか調整作業で納まりそうに思えます。赤いコードは何のコードなのか分かりませんが、以前修理した時に落とした物であることを願います。

鍵盤を見て見ると、フロントブッシングクロスが剝がれ落ちている物が幾つかありました。また、ブッシングクロスのへたりで鍵盤ガタが出ています。

加えて鍵盤ブロックのクロスも虫食いの様な状態で、穴が空いている物も有りました。

こちらは要交換です。

また、ピックアップコイルの断線とトーンジェネレーターのサビの発生、ダンパー調整不良、ハープ調整不良等やらなければならない作業がかなりありそうです。

高音部のピックアップのビスは随分とサビが発生しています。やり出すとかなりのメンテナンス作業が必要になりそうです。

2023.10.09改めて動作確認を行いました。電気回路関係は今の所問題無く動作しているようです。ただ鍵盤のならしがガタガタでおまけにハンマーの打弦位置がバラバラなので、このままでは弾きずらくてどうしようもありません。

鍵盤の高さもバラバラな為、ならしをする必要があります。

鍵盤定規をあてて鍵盤を弾いて見ると、鍵盤の高さが高い所は戻る時にカチカチと音がしますが、低い所(特に中音部)は鍵盤が下がってしまっている為、戻る時に音がしません。(鍵盤定規は本来こう言った使い方をする物ではありません。念の為。)

ハンマーチップも幾つかで裂けている所が有ります。

ダンパーもアッチ向いてホイの状態の物があります。

これでは音の止まりが悪く、演奏出来ません。

2023.10.16キーブロックフェルト交換の為、現在取り付いているフェルトを剥がす作業から開始しました。この時代のRhodes Pianoのキーブロックは平面になっており、そのままではタッチが重く感触が悪いです。その対策の為と思われますが、こちらのモデルでは小さくカットしたフェルトをキーブロックの根元に接着してありました。これによってタッチ感が格段に良くなります。ただ、カットの仕方がかなりアバウトだったので、幾つかは新たに貼り直しました。

キーブロックフェルトを剥がすのと同時に、フロントブッシングが剥離していたので、そこは新しいブッシングクロスを貼りました。

新たに貼り付けるブッシングクロスは、1.5㎜厚のクロスを1㎝幅にカットして作って行きました。この辺の作業はアコースティックピアノの修理の経験が生きてきます。

単純な作業では有りますが、細心の注意と集中が必要です。接着剤がしっかりと乾くまで1日エイジングで置きます。

2023.11.16交換用のパーツの入荷に時間がかかりましたが、やっと手元に届いたので早速ハンマーチップの交換作業を始めました。

先ずは取り付いているハンマーチップを剥がします。

剥がしたあとは接着剤がハンマーに固着していますので、これを一つ一つ剥離して行きます。この作業は時間がかかるのですが、これをしっかりとやっておかないと、ハンマーチップがしっかりと接着出来ず、いずれ剥がれてしまうので大切な作業です。

何種類かのカッターとヤスリを使って綺麗に落として行きます。

その後それぞれの番手のゴムチップを貼り直して行くのですが、接着剤の乾燥時間が必要なので、1日で出来る作業は33KEY位までです。

丸二日かかりましたが、ハンマーチップ交換が完了しました。この後は接着剤の乾燥時間を2日程取ってから、接着状況の確認をします。その間、ダンパーフェルトの傷んだ部分の交換作業をして行きます。

2023.11.24鍵盤とアクションのアッセンブリーを取り外して、ケースの内部のチェックとお掃除をしました。汚れとホコリが溜まっていましたので、綺麗にお掃除をしました。初期モデルはキーベッドの取り付けビスが後期モデルとは違っていて、全てのビスを外す必要が有ります。

ダンパーロッドやクッション材のへたり等も確認しながらアクションを取り付けて行きます。

アクションを取り付ける時には、前後左右の隙間を確認して、取り付け位置がズレていないかを見ます。下手をすると斜めに取り付いたりして、後のパーツの取り付け時に不具合が生じる事が有ります。また、各パーツのビスの緩みもチェックして、緩んでいる場合は最適トルクまで増し締めします。

ダンパーパネル、トーンジェネレーターを取り付けして、元通りにしました。この後鍵盤をセットして、いよいよハープ調整等の調整作業に移って行きます。

2023.11.28鍵盤をセットして発音状況とダンパーの止音状況を確認しました。すると次高音から高音部にかけて止音不良が沢山あり、低音部では発音不良が多くありました。これはハープの調整不良によるものです。

ハープの調整をする前に、鍵盤のならし(高さ合わせ)をしました。

白鍵の鍵盤ならし

その後黒鍵も鍵盤ならしをします。

プリアンプの付いたパネルを本体に取り付けようとしたところ、鍵盤おさえのフェルトが歪んでいました。長年この状態で取り付いていたようで、ちょっと擦ったくらいでは元に戻りません。

そこで、スチームアイロンを使って元通りにしました。

2023.11.30鍵盤の汚れがひどかったので、バフ研磨しました。

鍵盤上面もそうですが木口の黄ばみもひどく、バフにマチレスを小まめに付けて何回も研磨をして綺麗にしました。

ハープとプリアンプを接続するコードの被覆が破れていました。

このままでは心配でしたので、絶縁融着テープで補修をしておきました。

電源コードもグレーのビニールテープが巻いてあった所が、やはり被覆が傷んでいました。

こちらも絶縁融着テープで補修をしておきました。

ハープからプリアンプに接続するコードが断線すれすれの状態でしたので、こちらはハンダで固定しました。

プリアンプパネルもクリーニングしたので、全体的に綺麗になりました。

その後、ハンマーの当たりとダンパーの当たりの調整となります。特に高音部のダンパー調整は隙間が狭い為難しい作業となります。

最低音のピックアップは取り外してまき直し修理した所、生きていましたので再度取り付けました。

その他、ダンパー調整やハープ調整を行っています。問題が起こらなければもう一歩の所まで来ました。

2023.12.26ハープ調整と調律の最終調整に入っています。ハープ両サイドの固定ビスを締めて調整をして暫くすると、トーンジェネレーターとハンマーのアタックポイントが変わって来て、特に高音部の音色が変わってしまいます。どうもトーンジェネレーターを固定する為に使用されているゴム製のグロメットの劣化が原因のようです。温度、湿度の影響も有るので、もう少し時間をかけて調整します。

2024.01.07これまで年末、年始にかけて調律や調整を行って来ました。当初は中々落ち着かなかったですが、年が明けてやっと作業がスムーズに進むようになりました。調律、ハープ調整とボイシング調整も終えて暫く様子を見る為エイジングを行います。

欠品していた蓋のヒンジも新しいパーツを取り寄せて取り付けました。長い時間かかりましたが、何とかお戻しの目途が立ってきました。

2024.02.04お戻し前の動作チェックの為、暫く試弾して全体のバランスを見ました。すると低音部の3keyがタインへの当たりに不安定さが有り、タッチによって発音にバラつきが出る為、キーブロックに取り付けて有るクロスに高さ1㎜程のクロスを増張りしてタッチ調整を行いました。これでピアニッシモの発音もクリア出来ました。

続いて高音部の黒鍵のタッチが鈍く、重さを感じたので、外してキープライヤーでバランスブッシングをプレスしたら、なんと鍵盤とバランスブッシングが張ってある木部パーツに接着剥がれが有り、パーツが取れてしまいました。滅多に無い事ですが、古い楽器はピアノやギター等でも接着剤が劣化して接着剥がれを起こす事が有ります。最終試弾を行わなければ見逃していたかも知れませんので、やはりこまめな動作チェックの必要性を感じました。おまけにその隣の白鍵はバランスブッシングが剥がれていたので、共に接着しました。鍵盤を取り付けた後に、再度全体の動作確認を行い、納品に備えます。

2024.02.06不具合箇所の修理と最終チェックを終えていよいよ出荷待ちとなりました。

念には念を入れて動作確認を行いましたが、こちらのモデルは製造から60年程経過しているので、いつ何が起こるか分かりません。万全の処置を施してはいますが、見逃しや移動時の振動などによって不具合が発生する可能性も有ります。

先ずは無事にお客様の元へお戻しする事に集中して参ります。

続く

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