ローズ ピアノ マーク1 修理 2023.07.05
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
2023.07.05愛知県よりローズピアノの修理依頼品が届きました。今回は西濃運輸さんに当社より集荷依頼をかけて、お客様宅に引き取りに行って頂きました。条件としては段ボール梱包をして頂く事とトラックの積み下ろしをお手伝い頂くと言う事です。
7月4日引き取ったRhodes pianoが翌日5日には当社に届きました。このスピード感は大したものと感心します。
段ボールの梱包を解いて中身を確認した所、ぱっと見なかなかの強者と思われました。
蓋を開けて、パーツも見ましたがこれはかなり手強い相手となりそうです。脚も不具合が有ったり、クロスバーも欠損しているのでこのまま使うのは危ないです。
本体もカビが発生していて、やりがいのある仕事になりそうです。
先ずはスーツケースのアンプの上に本体をセットして、動作確認をしました。接触不良や経年劣化による不具合は有りましたが、何とか音は出るようです。
全音発音してみましたが、一部音が出ないKEYが有りました。ただピックアップが断線している訳ではなく、接触不良が原因でした。
ただ1音、音が出ないKEYがありました。
こちらはNO23,D2のタイン折れが原因でした。
内部の状態を見る為にハープを上げてみました。トーンジェネレーターの部品と思われるスプリングが転がっていましたが、これは以前交換した時の物ではないかと思います。
外装の傷み方に比べると、ハンマーやダンパーは思いの外傷みが少ないように見えます。しかし一つ一つチェックしてみないと分からないので、安心は出来ません。
鍵盤下の棚板はゴミやホコリが少なくて、割と綺麗な状態です。バランスピンとフロントピンを触った感触はやはり粘っこい感じで、汚れが付着しているのが分かります。
パンチングも所々虫食いの被害で朽ちているところがあります。さてさて、これから何をどこまでやって行くか、お客様と相談の上メンテナンス作業の内容を決めて行きます。
改めて本体を見てみると、トーレックスの破れがひどく少々気の毒な感じです。こちらも何とかしたいですね。
2023.07.10手始めに鍵盤のクリーニングから始めました。通常は鍵盤バフだけの作業なのですが、こちらの鍵盤は黄ばみと汚れを落とす為、ペーパーでの下処理をする事にしました。そこで1つ試しに下処理をしてみましたが、かなり綺麗になりました。しかしよくよく考えると、全ての鍵盤をこのレベルまで仕上げなければならないのでした。ちょっと最初の鍵盤に力を入れすぎてしまったようです。
結局一番初めの鍵盤の下処理には5分程かかりましたが、この仕上がりレベルに揃えなくてはならないので、5分×73=365分、エッ?つまり6時間となります。これまでの鍵盤調整で最長記録になりそうです。
とりあえず第一工程を一度済ませてから、仕上がり状況に応じて再度ペーパーを当てる事にしました。第一工程だけでも鍵盤の色がこんなに違います。この下処理の工程を済ませてから、通常はバフ研磨で仕上げですが、どうもそうも行かないようです。
結局1回のペーパー処理では黄ばみが落としきれず、ほぼ全て2回のペーパー処理をしました。これで何とか下処理が完了です。
鍵盤の下処理だけで丸二日かかりました。この後いよいよバフ研磨で仕上げて行きます。スケジュール的には週明けの作業となります。
2023.07.16時間が取れたのでトーレックスの張り替え準備の為ハープを外してケース内部を見てみました。
先ずハープを固定するビスが1本欠損していました。本来は2本無くてはなりません。
次に目に着いたのはダンパーロッドアッセンブリーの本体側の虫食い被害です。トーレックスの張り替えをしなければこのままの状態で進んで行ってしまったと思いますが、やはりこのままにしておく訳には行かないでしょう。
本体のクッションフェルトも殆ど擦れて無くなってしまっています。
ダンパーロッド側のクッションフェルトも磨滅しています。
ハープ部もこれから作業に入りますが、何もない事を願うばかりです。
左右の拍子木もかなり傷んでいるので、在庫品から外した程度の良い拍子木に変えようかと思います。
ちょうど同じ形状の物がペアで有りました。
本体トーレックスの補修と部分張り替えを始めました。
接着は数回に分けて張り込んで行きますので、どうしても日数がかかります。他の作業と組み合わせながら進めて行きます。
本体のトーレックス張り込みの合間を縫って、鍵盤のバフ研磨を行いました。バフ掛けした鍵盤は光の反射が全然違うのですぐに分かります。
本体のトーレックスは余分な部分をカットして張り込んで行きます。
トーレックスの接着乾燥時間でダンパーロッド関係パーツのフェルトの張替えを行いました。これで鍵盤から本体外装までの作業が終わり、引き続いてバランスピン、フロントピンの調整、ハープ調整、調律と進めて行きます。
高音部側のハープを止めるビス穴がバカになっていて、ビスが1本欠損していました。そのままでは固定出来ませんので、ビスに合うナットを探して取り付けました。ハープを外す事はあまりないと思いますが、注意してください。
バランスピンの布パンチングが虫食いで被害を受けてボロボロになっているものも有りました。この布パンチングは計ってみると1.8㎜でした。在庫のパンチングは1.5㎜の物ですので、0.3㎜の紙パンチングをいれて高さ補正をします。
バランスピンの磨き込みはパンチングを全部外してピンの根元から研磨します。
フロントピンも同様にパンチングをはずして根元から綺麗に仕上げます。
バランスパンチングには布パンチングの厚さ補正の為0.3㎜の紙パンチングを敷きます。
その後に布パンチングを敷きます。こうする事で鍵盤を外す時に紙パンチングが鍵盤にくっついて無くなる事が防げます。
念のため自家製の鍵盤定規を当てて、鍵盤の高さを見ました。
こちらの画像でE~2オクターヴ上のFまでの間の鍵盤が、鍵盤を戻した時にカチカチ言いません。ここが鍵盤が下がっていて、鍵盤定規との間にすき間がある部分です。
殆どがそうですが、中央部が少し下がっています。こちらは鍵盤ならし調整をして高さを揃えます。
鍵盤ならしを終えるとどの鍵盤も戻る時に鍵盤定規に当たってカチカチと音がします。
黒鍵も同じように鍵盤ならしをして高さを揃えました。
折れていたタインの交換もして、一応全音が発音するまでになりました。ここで気になるのが鍵盤の重さ、と言うよりはもたつきと言った方が良いのか粘っこい感じと言った方が良いのか、要するにタッチ感が気持ち悪いのです。色々な原因が考えられますが、バランスピンもフロントピンも滑らかになりましたので、その他の何かが原因です。何らかの抵抗が有るようなのでいろいろ探ってみました。鍵盤のパンチングを足したり引いたりして鍵盤の高さを変えてみましたが殆ど変化が有りません。次に考えられるのが鍵盤とアクションの接点です。
ローズピアノはモデルによって、鍵盤側にブッシングクロスを貼っている物と、初期のモデルではハンマー側にブッシングクロスを貼っている物とに分かれます。こちらのモデルは初期モデルですのでハンマー側にブッシングクロスが貼ってあり、鍵盤のキーブロックはそのまま木材を使っています。この部分を触ってみたら粘っこい感じがします。これは汚れの付着によって抵抗が出ている可能性が有ります。そこで無水エタノールを使って汚れ落としをした後、シリコンクロスで拭きあげてみました。
やはりここの汚れが抵抗になっていたようで、当初の感触より随分良くなりました。もう一つ、トーンジェネレーターとハンマーのヒッティングポイントを調整する事で本当にスッキリとしたタッチに蘇りました。結局この作業で1日が終わってしまいましたが、こうやって問題が解決してRhodes Pianoが蘇って行く時が、やっていて一番充実感を感じられる時間です。これが有るからやめられないのです。
いよいよ完成に向けてピッチを上げて行きます。
2023.07.24本体に磨き上げた金具を取り付けました。やはり綺麗になって行くと心もウキウキして来ます。
ちなみにフタに関してはそのままの状態でお渡しとなりますが、使用前使用後的に違いがはっきりと判って良いのではないかと思います。
一応拭き掃除をしてホコリやカビは取り除きます。
A=441Hzで調律を行いました。ピッチの狂いは少なかったですが、タインにサビが発生していた為コイルの動きが悪く、下手をするとタインを折ってしまう事があるので、簡単なサビ落としもしておきました。
その後ダンパー調整の為ダンパーペダルを取り付けようとしたところ、ペダル下部のクッションボルトが2本欠損していて、ペダル自体は問題なく動作していましたが、働きが少ない為代用出来るパーツを探して来ます。
2023.07.30ペダルのゴムクッションを探しましたがビスのピッチが合う物が無かったため、同じ厚さのゴムクッションを探して接着しました。本当はビス止めしたかったですが、当面これで問題無く使えるでしょう。
最終的な動作チェックを行い、微調整をして全作業が完了致しました。
お預かりしてからほぼ1か月の作業でした。最初はもっと時間がかかるのではないかと思いましたが、割と時間が取れて作業が順調にス進みました。
プチプチで下梱包してこの後段ボール梱包します。
送られて来た時の段ボールを使って梱包も完了。後は発送するのみです。
2023.08.13西濃運輸の営業所までお客様に引き取りに行ってもらい、無事にお戻し出来ました。こちらはお客様より頂いたセッティング完了の画像です。有難うございました。
終わり