Rhodes Piano Mark 1 Suitcase 73Key Maintenance 2024.02.09

ローズピアノマークⅠスーツケース修理 2024.02.09

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(有)ラッキーパイン

2024.02.09都内のお客様が2024.01.31に当初88KEYのmark2スーツケースを修理でお持込み下さいましたが、その1週間程後に先にこちらのモデルを修理して欲しいとmarkⅠのスーツケース73KEYを持ち込まれました。時間が取れたので、動作チェックをしましたが、音が出ません。そこでアンプを取り外して、中の状態を見てみました。

電源は入りますが、全く発音しません。これはコードの断線や接触不良が原因の場合も有るので、念の為アンプの基盤から追って行ってみました。

すると先ず気が付いたのはヒューズが1本飛んでいます。何が原因で飛んだのかは不明ですが、先ず一つこれが原因になっていたようです。

次に基板のコネクター周りや配線を1本1本チェックして行きましたが、特に断線は有りませんでした。ただし、以前に修理したであろう、コネクターを直付けハンダしてあるものが有りました。これはハモンドオルガン等でも有るのですが、コネクター部が接触不良を起こして、ノイズの原因になったり音が出なくなったりする事があるので、万全を期して配線を基板に直付けします。

加えて電源スイッチも接触不良を起こしていて、何回かON-OFFを繰り返すうちに、次第に正気を取り戻して来ました。

あくまで仮ですが、これで何とか音が出る状態になりました。

スピーカーネットも割れてしまっています。スーツケースの前面のスピーカーネットは両面テープで接着してあるのですが、この両面テープが鬼のように引っ付いて剥がれようとしません。少しづつ、優しく全体をまんべんに剥がして行かないとダメなのですが、ややもすると力いっぱいエイヤーッと引っ張って、この様になります。背面側はスピーカーがくっついているので、本体にはビス止めとなるので、この様な事件は起こりにくいです。

2024.02.25前面のスピーカーネットはそのままと言う事でしたので、取りあえず粘着テープでくっつけて置きました。粘着テープは時間が経つと劣化してベトベトになりますので、お戻し後は剥がして頂きたいです。

アンプとプリアンプのメンテナンスのご依頼を頂きましたので、先ずは洗浄と接点復活の為の作業を行います。使用するのは接点洗浄剤とケイグです。先ずは接触不良を起こしそうな部品の洗浄を行います。アンプは電源スイッチと各コネクター部を洗浄します。

プリアンプもボリュームとスライドボリュームの洗浄とケイグの塗布をしてメンテナンスします。

接点復活剤は少量をピンポイントで塗布します。ジャバジャバにして良い事は有りません。

その後鍵盤とハープの調整の為にそれぞれの動作確認をしましたが、何故かペダルが機能しません。何回位置合わせをしても機能しないので、不思議に思って鍵盤の下を触って見ると、あるはずのない金属パーツが手に触れました。鍵盤を倒して裏側を見ると、なんと本来はステージモデルに有る脚のレッグフランジが付いているではありませんか。と言う事は、元々この鍵盤部はステージモデルの鍵盤で、プリアンプを別のスーツケースから持ってきて取り付けて、2個1にしたもののようです。

スーツケースとステージではペダルのパーツが違うので、その為にペダルが作動しなかったのでした。そういえば、当初お持ち頂いた時にペダルの突き上げロッドが1~2cm出っ張っていて、危ないので正規位置まで戻したのを思い出しました。さて、これからどうしましょうか?

2024.02.27お客様よりペダルはこのままで使う旨の御返事を頂きましたので、ハープの調整とボイシング調整を行う事にしました。

ただプリアンプのボリュームに若干のガリが残っていましたので、今回は無水エタノールで洗浄してからケイグを塗布して調整作業を行いました。

ハープ調整を終えて調律に移ろうとした時に、どうも音色に歪みが出ていました。まず疑われるのがケーブル関係でしたので、プリアンプから追って行きました。しかしケーブルを交換してみても歪みが消えずなかなか原因がつかめません。次に別のアンプに繋いでみると歪みは消えていました。と言う事はスピーカーやスピーカーに接続するコードが原因では無いです。そこでアンプの中を追って行きました。

アンプ内の配線をチェックして行くと、以前修理された跡があるコネクターに直付けされたケーブルが浮いているのが確認されました。

よくよく見ると直付けしたケーブルの2本が断線していました。これが歪みの原因のようです。

改めてハンダ付けして動作確認をすると、問題無く発音しました。経年劣化で色々なトラブルが起こるのですが、多くの場合は接触不良や断線等が多いです。こう言ったトラブルがある場合には、他の部品の劣化も心配される所です。

一通りのメンテナンス作業が完了したので、アンプ部のダンパーロッドを2㎝程出して鍵盤部とのセッティングを行ってみました。

先ず気を付けて頂きたいのが、スーツケースのレッグの位置です。鍵盤部はステージモデルの為、脚を取り付ける為のレッグフレンジが付いています。その為このレッグフレンジにスーツケースのレッグが干渉しないように位置を決めて貰う必要があります。

左右両方のレッグが干渉しないようにします。

その後鍵盤部の位置決めを行うのですが、これは二人で作業する必要があります。出っ張っているダンパーロッドを引っかけないように、鍵盤部の位置を決めて行く事と、ちょっとでも位置がズレているとダンパーロッドが鍵盤側のサスティーンガイドカップに干渉してしまい、鍵盤部が持ち上がってしまったり、ペダルに抵抗が発生して動きが悪かったり、ダンパーが戻らずかかりっぱなしになってしまったり、異音を発生したりします。その為鍵盤部の位置決めはミリ単位で行う必要があります。また、演奏中に鍵盤部が動いてしまう事もおきますので常に位置の調整が必要になります。

ちなみにダンパーの突き上げ棒の位置も本来の位置では無くカップの手前の土手の上に乗せて有りました。多分長さを稼ぐためだと思います。

2024.02.29最終的な動作確認を行った後、ペダルの動きに若干の抵抗が有りました。そこで少しでもスムーズな動きを確保出来るようにグリースを塗っておきました。

こちらのグリースはAMS OILと言うレーシング用の車両に使う特殊なグリースで、経年劣化や硬化が少なく、時間が経っても効果が続きます。

グリースを塗ったとはクロスで余分なグリースを拭き取っておきました。これでペダルの動きがスムーズになりました。

再度パーツ類を組付けて動作確認を行い、問題の無い事を確認して作業終了となりました。

2024.03.01本日午後にお客様が引き取りにお越しになるので、出荷前の最終チェックを行いました。すると、ドキッ!ほんの少しですが音色に歪みが発生しています。どうも接触不良が完全に治っていなかったようです。改めてプリアンプのボリューム、ビブラートのインセンシティーとスピードのボリュームの洗浄とケイグの塗布を行いました。それでも完全に改善されていなかったので、ケーブルから各コネクター、その後アンプのハンダ剥がれの確認をしましたが特に断線や接触不良は有りません。そこでスピーカーケーブルのコネクター部、基板のコネクター部の洗浄とケイグの塗布を行いました。調整後時間の経過と共に接点の通電が低下したようで改めて試弾した所、問題は解決しました。

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