Rhodes Piano Mark1 Stage Maintenance 2023.05.20

ローズピアノ マーク1 ステージ 修理 2023.05.20

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2023.05.20 都内にお住まいのお客様がRhodes piano Mark1 Stageを修理の為お持ち下さいました。土曜日の午前中という事で、東名高速の渋滞にはまってしまい、当初のお時間より1時間程かかってしまわれたようです。大変ご苦労様でした。

取りあえずザっと見てみると、鍵盤のガタツキが半端ではなく、これではちゃんと弾ける状態ではありませんでした。隣の鍵盤との隙間が大きかったり、中には隣の鍵盤に当たってしまうものもありました。

これから作業内容を検討して、見積もりをお作りする事にします。

2023.05.24修理内容が決まりましたので、修理開始しました。

先ずは鍵盤を全て外して内部の確認をしました。

棚板のホコリは年数なりと言った感じですが、フロントパンチングに赤いシミが出ていました。これは鍵盤のブッシングクロスを虫が食った後のフンです。つまりブッシングクロスが虫に食われていると言う事です。

ダンパーも場所によってバラつきがあり、これではちゃんと演奏出来ません。

これだけバラバラになったのには、それなりの原因があったのだろうと思います。この辺は修理を進めて行く中で確認して行きましょう。

鍵盤をみてみると、ブッシングクロスはかなりへたっていますので、全て交換となります。

鍵盤を確認して行くと、58番の鍵盤にビスが止まっていました。

確認してみると、鍵盤が折れて接着修理した跡でした。

かなり慌てて修理したのではないかと思いますが、時間があればもっとキッチリと修理出来たのではないかと思います。

今日は古いブッシングクロスの剥がし作業を24KEYやりました。残りはまた明日以降にやります。

作業の合間に、外装補修をしておきます。

トーレックスの剥がれている所や破れを接着しておき、後で調整をします。

続いて棚板清掃です。修理、メンテナンスの基本は清掃から始まります。全てを綺麗にしてからでないと、本来の状態まで戻す事は出来ません。

棚板清掃が完了したら、バランスピンの磨き上げ作業を行います。作業はパンチングを外して行います。その理由はバランスピンの根元が一番サビやすいからです。パンチングを外さなくても作業は出来ますが、やはりしっかりと調整をしたいのでピンの根元から綺麗にして行きます。

作業手順は、まず0000番のスチールウールでサビや汚れを落とした後、無水エタノールで清掃してからPROTEKで拭き取って行きます。こうする事で、ピンの滑りが格段に違って来て、タッチがスムーズになります。

フロントピンも同じくパンチングをはずして同じ作業を行って行きます。

2023.05.28 全ての鍵盤のバランス、フロント両方のブッシングクロスを剥がしました。

割とスムーズに剥がれてくれましたので、作業も順調に進みました。折角なので鍵盤の白鍵、黒鍵のキートップをバフ研磨して綺麗に仕上げておきました。

2023.06.05 新しいブッシングを貼ってみました。最高音から10KEYの張り替えを終えて、本体に取り付けてガタツキを見た所、まだかなりガタが出ています。通常純正パーツのブッシングは厚みが1.3㎜なので同じ厚さのパーツを使いましたがこれでは足りません。急遽1.5㎜と1.8㎜のブッシングクロスを注文しました。これだけガタが出ているのは珍しく、ブッシングだけでなくバランスホールが原因になっている可能性も有ります。とにかくパーツが入って来たら再度張り替えて動作を確認します。

その間、本体の補修とクリーニングをします。

先ず、破れや剥がれが有るトーレックスを接着して行きます。

接着剤を塗り込んだら、マスキングテープで押さえた後、スキージーで接着箇所を整えて行きます。接着が終わったらトーレックスの表面をクリーニングします。

この間に金属パーツを外して、サンドラバーやスチールウールを使ってサビを落とし、最後にバフ研磨して仕上げておきます。

これらの金属パーツが綺麗だと本体の見栄えが全然違って来ます。

2023.06.19地道な作業が続いていますので、この間作業状況のUPはしていませんでした。外装クリーニングとトーレックス補修、並びに金属磨きは完了して、残るはブッシングの交換とピックアップ交換、ハープ調整となります。

ブッシングは当初1.3㎜の物で交換しましたが、ガタツキが収まらなかった為、1.5㎜と1.8㎜の物を使用して交換してみました。さすがに1.8㎜のブッシングは厚すぎて使えませんでした。最終的に1.5㎜で交換して行きました。

KEY10本ずつ張り替えては本体に取り付けて、ガタや抵抗の具合を確認しながら進めて行きました。

ブッシングの貼り替え作業もやっと最後の鍵盤にたどり着きました。

鍵盤ブッシング接着の合間に、ピックアップ断線箇所の確認と交換の為の準備作業に入ります。当初断線を確認していたピックアップは2つでしたので、該当のピックアップを取り外す作業を行いました。

ピックアップを取り外す為にトーンジェネレーターを外します。

この時点で始めて分かりましたが、以前どちらかで修理をされているようで、その時にピックアップを幾つか交換しているようです。

今回断線していたピックアップは以前修理した時に、はんだ付けに手こずったようで、ピックアップのプラスチック部分が溶けて、ターミナル剥がれていました。このピックアップのターミナルにワイヤーをはんだ付けするのはとても難しく、厄介な作業で、手際よさと経験が要求されます。この分で行くと他のピックアップもちょっと心配です。

2023.06.24鍵盤ブッシングの交換、ピックアップ交換、ハープ調整、外装補修までの作業が終わりました。一応全ての鍵盤から問題無く発音しています。ここまでで、当初ご依頼頂いた作業はほぼ完成と言う所ですが、細かい所を見て行くと調整不良が幾つか有りました。

一つは低音部のダンパーフェルトです。フェルトの長さが長すぎる為、タインを抑える時にズレが出来ていました。

中にはダンパーが横にずれて、ダンパーの横側でタインをおさえている物もあります。多分交換した時にちゃんと採寸していなくて、パーツをそのまま貼り付けたのではないかと思われます。このままでも使えない訳ではないのですが、やはり修理しておいた方が良いと思います。

その他、ピッチがA=441Hzですが全体的にバラつきがあり、特に高音部にはかなりずれている鍵盤も有って、一度調律もした方が良いと思われます。

寸法違いで出っ張っているダンパーフェルトをカットして接着しなおしました。カットしすぎると止音不良となってしまいますので、少しだけカットしました。こう言う作業が入ると、後で何かが起こる事が多いです。ちょっと慎重に作業を進めます。接着が乾いたら調律をします。

A=440Hzで調律を行いました。バラつきは有りましたが割とスムーズに調律が出来ましたが、一音だけ厄介なKEYが有りました。B²の音ですが、タインが短くてこれ以上音程を下げられない状態です。

調律用のスプリングを先端ギリギリまで移動させても、まだ少しピッチが高くて、オクターブで弾くとほんの少しですがうなりが出ます。可能な限り対応しましたが、もしピッタリと合わせると言う事であればピッチを441Hzに上げるか、トーンジェネレーターを交換するかになります。

加えてピックアップも交換してあるようで、これ以上奥に動かせません。あくまで推測ですが、以前ピックアップを交換した時に、ピックアップの番手が違うため、ピックアップの先端がタインに当たってしまうので、タインをカットしたのではないかと思います。何とか治まる範囲での調整となります。

ペダルのダンパーロッドブッシングは欠損しています。

本体側のダンパーロッドブッシングも欠損しています。こちらのブッシングはロッドをセンターに合わせるようになっていますので、必ず取り付けておかないとペダルが正常に機能しません。

左側がペダルのダンパーロッドブッシング、右側が本体側のダンパーロッドブッシングです。

ペダルに接着しました。

本体側は下向きになるので、しっかりと接着しました。

カバーを取り付ける為、拭き掃除していたところ、Seventy-Threeのエンブレムが剥がれていました。

裏側を覗いてみると、エンブレムを固定する為のピンが折れて1本は欠損していました。こちらも接着して補修しておきます。

当初瞬間接着剤とポリマーで固めてと思いましたが、将来エンブレムを交換するようなことが有ると、瞬間接着剤だと剥がす時に大変でカバー本体を傷めてしまいますので、ボンドを使用し接着しました。

脚4本はサビ落としの後バフ研磨で磨き上げました。

ペダルロッドもサビ落としをしてバフ研磨で仕上げました。いよいよメンテナンス作業終了となります。

2023.07.01全てのメンテナンス作業を完了して、客様がお引き取りにお越し下さり、無事にお戻しできました。有難うございました。

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