Rhodes Piano Mark2 Suit case 88KEY Model Maintenace2023.08.24

ローズピアノ マーク 2 スーツケース 88鍵モデル 修理 2023.08.24

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2023.08.24猛暑が続く夏の日に、長野県大町市の「とある音楽家の古家」にローズピアノの引き取りに伺いました。そこは山深い、長く曲がりくねった山道を下って行ったところに突然現れた別世界でした。

古民家をフルリノベーションしたお部屋は、不思議と外の景色に溶け込んで、緩やかな時間の流れを作り出していて、なんとも心穏やかになれる場所でした。

2023.08.27工房に持ち帰って早速状態を確認してみました所、ピックアップコイルの断線が5個有りました。他にハープ調整不良や接触不良等が見受けられますが、重篤な故障等は無いようですが、もう少し時間をかけて見て行かないといけません。

ピックアップの断線とは別に、ハンマーチップが1か所無くなっている所が有りました。

最高音も音が出ない状態でしたが、こちらはハンマーを取り付けているフレンジの破損の様です。

また、ペダルを踏むとカチカチと異音が発生しています。こちらも本体を分解して修理します。

2023.09.01先ずは鍵盤部から修理に入りました。

アクションを外し、鍵盤を外して行くと、そこは枯れ葉やゴミが溜まっていて、中々な状態です。しかしこの枯れ葉等を見ると、プラ鍵で良かったと思います。もし木鍵でしたら木部の反りやブッシングの虫食い等の被害が発生していたと思われます。

中には何のビスか分かりませんがビスが一つ落ちていました。何かの部品を止める為のビスかも知れませんので修理中はとっておきます。

修理のスタートは基本の基、お掃除から始めました。バランスピンにマスキングテープを貼ってパンチングが飛散するのを防ぎます。

ケースの底を見ると、ダンパーロッドが丸見えの状態です。ここは後で補修します。

また裏側のトーレックスに破れがあったので、こちらは接着剤で貼り付けました。

接着剤が乾くまでマスキングテープで固定します。

ダンパーを取り付けるバーの固定方法がビス止めではなくスプリングとスペーサーで固定していました。

最高音のハンマーの取り付け部の破損状況を調べる為にダンパーから外して行きます。

取り外したハンマーの根元を見ると固定用のボッチが折れて欠損していました。これでは使えませんのでパーツ交換します。

同じ規格のハンマーが有りましたので、こちらに交換します。少々色が白いですが、これはお許し下さい。

パーツを取り付けて動作チェックしましたが、問題なく動いていました。

ついでにハンマーの裏側もお掃除しておきました。結構蜘蛛の巣状のほこりが溜まっていました。

2023.09.03 時間が取れる時に出来るだけ作業を進めておこうと思い、日曜日でしたが午後から作業を進めました。先ずは欠損しているハンマーゴムチップの取り付けです。取り寄せておいたゴムチップは73KEYと88KEYで取り付ける番手(種類)が違っていて、ガイドに従ってパーツを選定しました。KEYは低音部から23鍵目のKEYでしたが、73KEYの場合と88KEYの場合ではZONEナンバーが違って来ます。

88KEYのNO23はZONE1に入りますので、このゴムチップを取り付けます。73KEYの分類で行くとZONE2になりますが、現物を見ると形状や大きさが違っていました。

しっかりと接着してマスキングテープで印を付けておきました。後はハープのねじ止めやビスのサビ落とし等の下処理をしておきました。

本体のトーレックスの破れを接着した後、ケースをクリーニングして汚れを落としておきました。

ダンパーロッドの頭のクッションも虫食いでやられていたので、ピアノ用の厚手クッションフェルトを加工して接着しました。

同時にケース内部のトーレックスの剥がれと、背面のスペーサーの木材が湿気でめくり上がっていたので、接着補修します。

ダンパーを取り付けた所、最低音のダンパーの掛かりが悪く中途半端な動きとなっています。これはダンパーパネルがスプリング圧によって左に押されてしまって、最低音のダンパーにしっかりとかからない事が原因の様です。

その為最高音側のダンパーパネルのロッドにタイラップを巻き付けて、ダンパーパネルを低音側に寄せるようにしました。

これでダンパーは正常に動作しました。

続いて鍵盤のお掃除をします。

鍵盤にはゴミやクモの巣等が付着していました。全部取り除いた後コンプレッサーでほこりを飛ばして1鍵ずつクリーニングしました。

全ての鍵盤のクリーニングを終えて、バランスパンチングを全て布パンチングが上面に来るようにひっくり返しました。これで鍵盤の下処理は完了です。

ハープを本体に乗せて、ビス止めして固定しました。ビスはサビが発生していましたのでサビ落とし後グリースを塗って処理をしておきました。

その後鍵盤をセットしていよいよ音出しとハープ調整をしました。鍵盤毎にタッチにバラつきがあったので、全体のバランスを取って均一に発音するように調整しました。この後、ピックアップの断線修理とプリアンプ、メインアンプのメンテナンス、ダンパーペダルの調整、調律と進めて行きます。

当初ピックアップの断線は6個と思っていましたが、ハープ調整をして行く中で実際に断線していたのは3個でした。こちらは低音部のG11

こちらは中音部のG#48

そして高音部のG#84この3つのピックアップコイルを交換しました。

続いて、プリアンプのボリュームポッドにガリが出ていましたので分解して接点復活剤を塗布します。

Caig D5を塗布して暫くエイジングでなじませるために置いておきます。今日の作業はここまで。

背面のスピーカーネットを外して内部の確認を行いました。先ずはビスが2本サビて折れてしまいました。こちらはビスを交換します。また、内部にはどんぐりの殻のような物やちょっと何だか分からない物が入っていましたので、掃除機でお掃除します。

湿気の影響を受けているようで、電源トランスはかなりサビが発生しています。この状態だと、基盤やコネクターも傷んで接触不良を起こす可能性が有りますので、接点磨き等の調整をしておきます。

ペダルクッションフェルトも殆ど朽ちていたので、同じ厚さのフェルトに貼り替えておきました。

ペダルのノイズはダンパーロッドのクッションが欠損していたためでしたので、クッションフェルトを接着して高さを合わせました。

また、基盤のコネクターは接触不良を起こして雑音の原因となる事が有りますので、グラスファイバー鑢で磨いておきます。

その後調律に映りましたが、どうも動作が不安定です。電源を入れると問題無く音が出る時と、レベルが低い時、また音が殆ど聞こえない時とその時々によって様子が違います。これは原因究明しないと、お戻しした後に不具合が発生する危険性があります。

またそれとは別にレベルの低いKEY がありました。確認したらA#62が断線していましたのでピックアップを交換して問題なきを得ました。その後電源のON-OFFを繰り返すと、動作が不安定なままです。ちょっと厄介なことになって来ました。

アンプは正常に動作していましたので、不具合の原因はプリアンプからアンプに繋がるケーブルまでのどこかと言う事になります。プリアンプを外してはパーツ類や接触をチェックして再度取り付けて動作を確認すると言う作業が続きました。当初ボリュームポッドのガリが完全に消えていなかったので、Caigを再度噴霧したのが原因かと思いましたが、いろいろとチェックするうちに、どうもトレモロのON-OFFスイッチに原因が有るようです。取りあえずの調整をしてみると、安定して発音するようになりました。週明けに改めて原因究明をします。

2023.09.10音が出ない状態の時に、アンプのヘッドフォーンでチェックした所、ヘッドフォーンでも聞こえません。これはアンプに信号が来ていないと言う事です。

そこで今度はアクセサリー端子から外部アンプに接続してみると、こちらは音が出ます。ただし、当たり前ですがボリュームやトレモロは効きません。

そこで5ピンケーブルに原因が有るかもと思い、ケーブルを当社の備品に変えて接続してみました。

ケーブルを変えても症状は変わりません。と言う事はプリアンプ内のどこかに原因が有る事になります。しかし、この音が出なくなる症状は常にではなく、本当に時々、それもいきなり出なくなります。暫く問題無く音が出ていて、自然に直ってしまったのかな?等と淡い期待を持って鍵盤を弾いていると、ある時いきなり発生しますので、何が原因なのかを調べるのも一苦労です。何か因果関係がつかめれば、そこから追って行けるのですが、プリアンプのどこかの異常と言う事実だけで原因を究明するのは本当に雲をつかむ様な気分です。

調律をしながら作業を進めて行くと、ある瞬間いきなり音が出なくなりました。ここで、プリアンプのスイッチ類を動かしてみて、何か反応するスイッチが無いかチェックしてみた所、やはりトレモロのON-OFFスイッチが怪しいようです。音が出なくなる時に全くノイズが発生しないと言う事は、基板のハンダ剥がれや接触不良も疑われます。明日以降、基板の修理を進めて行きます。

プリアンプを外して基板の状態を確認しました。初めは目視で何か違和感がないかを見ます。その後パーツを触ってハンダの状況を確認しましたが、特に異常は見当たりません。

そこでトレモロスイッチの洗浄と基板の周辺パーツの再ハンダを行いました。

この症状は本当に時たま発生するので、電源のON-OFFやトレモロスイッチのON-OFFを繰り返して状況を監視しますが、今は全く出ません。

直ったのかたまたま機嫌が良くて症状が出ないのかハッキリしないので、今日一日電源をONにしてエイジングで様子を見る事にします。

2023.09.11今日一日電源のON-OFFとスイッチのON-OFFを繰り返して動作確認しましたが、不具合は出ませんでした。やはりプリアンプのトレモロスイッチ周辺にトラブルの原因が有ったようです。明日再度チェックして問題が無ければ、お戻しの為の発送準備を致します。

2023.09.12朝から動作チェックを行いましたが、問題無く動作していましたので、発送の準備をしました。お客様のご都合が合えば本日西濃運輸で発送します。お客様の元で無事に活躍する事を願っています。有難うございました。

2023.09.13西濃運輸の営業止めで発送完了しました。後はお客様のお手元に届いて、無事に動作してくれることを祈っています。有難うございました。

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