Rhodes piano Mk1 88KEY Suitcase Maintenance & Tolex reupholstery 2023.05.02

ローズピアノ マーク1 88鍵 スーツケースモデル 修理とトーレックスの張替え 2023.05.02

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ピアノ職人・VIRA JAPAN 
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2023.05.02兵庫県よりRhodes pianoの修理品を送って頂きました。配送は西濃運輸さんにお願いしています。

こちらのモデルはmark1の88鍵モデルで、前回2022年4月に一度鍵盤タッチの調整でお預かりして修理したものです。

今回はのご依頼内容は

  1. 鍵盤ブッシンング交換(フロント・バランス) 
  2. ダンパーペダルの調整(異音がする)
  3. ハープ調整
  4. プリアンプ調整・コネクター接触不良修理

となります。

早速本体の動作確認をしようと梱包を解いてみたら、アンプ部のステーが上下逆さまについていました。

アンプ部を立ててステーを取り外して付け直しました。

これが正常な状態です。

また、背面側のスピーカーネット下部には切れが入って破れていました。

取りあえず、本体を組み立てて電源ケーブルを繋いで音出しをしてみました。先ず何からやるかと言えば、鍵盤ブッシングの交換からになりそうです。

中音部のバランスブッシングは擦り減って楕円形にえぐれています。

ちなみにこちらは低音部のバランスブッシングです。中音部程擦り減ってはいません。

こちらは中音部のフロントブッシングです。やはり楕円形になっています。

こちらは低音部のフロントブッシングです。減りが少ないので鍵盤のがたつきも少ないです。

ブッシングは使用頻度に応じて擦り減って来て鍵盤のガタツキが生じます。ブッシングを交換すればガタツキは収まりますが、湿気を吸ってブッシングが膨らみますので、張替え後暫くエイジングで時間をかけて何回か調整する必要が有ります。今回は割と時間をかけられますので、しっかりと調整してお戻し出来そうです。

テスト的に中音部4KEYのブッシングの張り替えをする事にしました。先ずは擦り減ったブッシングを剥離して行きます。バランスブッシングを剥がすのに、かなり時間がかかりました。

フロントブッシングも剥離しましたが、こちらも綺麗に剥がれず時間がかかりました。

どうも使用されている接着剤が通常使う物と違っているようで、いつもならば熱をかけて暫く置いておけばサラッと剥がれるのですが、こちらの接着剤は綺麗に剥がれません。一度ブッシングを剥がしてから、ホールに残った接着剤やブッシングの切れ端を綺麗に剥がす為に、再度熱を加えて綺麗にして行きます。ホールに接着剤やブッシングの残留物が残ってしまうと、新たにブッシングを貼った時にデコボコになったり、隙間寸法が違ってしまうため、鍵盤タッチのバラつきの原因にもなるので、完全に綺麗にします。

その後、新しいブッシングクロスを張り込みます。今回は以前張り替えに使ったブッシングクロスをカットしておいたものを使ってみます。ブッシングクロスも厚みが何種類かあるので、一番しっくり来る厚みの物を使うようにします。

バランスブッシングと共にフロントブッシングも接着して行きます。これで1日置いて明日鍵盤の動きとガタツキが無くなっているかどうか確認します。

1日置いてセットしてみました。KEY43から46が交換したKEYです。未交換のKEYに比べてガタツキが治まっていますが、この状態で1週間程放置して、どの位変化が有るか見て行きます。ブッシングの厚さと時間経過による膨らみによってタッチに影響が無ければ、同じパーツを使って交換して行きます。もし不具合が発生した場合はパーツの番手を変えて行く事にします。

とりあえず30分集中してブッシングクロスを剥がした所、6KEYが限界でした。88KEYを剥がすとなると7時間20分かかる計算です。剥がしながら感じたのですが、どうも貼り付けてあるのはブッシングクロスでないように思われます。減り方も通常のブッシングクロスの減り方とは違うようですし、接着剤も一般的な接着剤とは違うようで剥離が大変です。ただ時間はタップリ頂いていましたので、コツコツと進めて行く事にします。

当社の在庫ではなく、お客様からお預かりした鍵盤ブッシングクロスを使って張替えてみました。(KEY No 47~49)同じように張り替えましたが、何故か鍵盤が戻ってこなくなりました。これはブッシングクロスがやや厚いのと張り替え後の調整をしていない為です。これからキープライヤーを使ってブッシングクロスをつぶしてみます。

鍵盤調整で問題無く動作するようになりました。

鍵盤の重さを測って見ました。最初の鍵盤から4KEYは当社在庫品で張り替えた物、後の5KEYはお客様からお預かりした専用パーツを使ったものです。初めの4KEYはストンと言う感じで鍵盤が下がりますが、5KEY以降はスーッと言った感じです。これが暫く放置しておいて、湿度が高くなった時にどの位変化するかを見てから最終的に張り替えるブッシングクロスを決めて行こうと思います。

2023.06.12最終的にお客様からお預かりした純正パーツに全て張り替えてみました。張り替え完了後数日間エイジングの為に放置して様子を見ました。

ここ数日雨模様の天気が続きましたが、特にキータッチが重くなったり動作が緩慢になったりする事は有りませんでしたので、何とかブッシングの張り替えは順調に進んだようです。もう暫く様子を見て次の作業に移ります。

雨が続いたので、再度鍵盤の動作確認をしました。通常であれば問題無しのレベルですが、鍵盤の戻りスピードが他の鍵盤と違う物が有り、もう一度調整をしました。

この間、他の作業を行おうと思い、内部点検をする為アンプを外してみました。

接触不良の対策として、各コネクターの接点の清掃と接点復活材の塗布を行いました。

ペダルノイズの原因追及もありスピーカーケース内部を見まわしてみた所、配線が浮いています。これは背面スピーカーのケーブルです。

たどって行くと、メモが貼って有りました。これは意図的に外しているのか接続し忘れたのか分かりませんので、お客様に確認する事にします。

2023.08.18暫く間が空きましたが、お客様よりトーレックスの張替えのご依頼を頂きましたので、材料が入荷するまで他のお客様の修理を優先させて頂きました。一段落ついたので、今回ご依頼頂いていた分でまだ手つかずだった作業を行いました。一つは高音部のハープ調整(2オクターブ)とプリアンプ調整・コネクター接触不良修理です。高音部のハープ調整は音色にムラが有りましたので調整致しました。ただピックアップ切れが一つ(NO82 F7#)が有りましたのでピックアップ交換を致しました。またそれ以外にハンダ不良が幾つか有り、これも修理しました。

次にプリアンプ調整とコネクター接触不良修理ですが、一応プリアンプ関係の接触部を確認しましたが特に異常は有りませんでした。そこで5ピンのコードを交換して繋いで見ると音が出ません。念の為コードの接触不良を確認した所、ch2が断線していました。

テスターで計測すると、CH2は断線しているのが確認出来ましたが、それと共にワイヤーのねじれ具合によってはCH3にショートしているようです。これは常時ではないですが、どうもコードの不良のようです。もう一つ依頼されているダンパーペダルを踏んだ時に異音がする症状は、トーレックス張替えの時にユニットを分解しますので、その時にチェックします。

2023.11.08修理が立て込んでいたため、なかなか開始出来なかったトーレックスの張替え作業を開始しました。新しいトーレックスを張り込むと、何処に何の部品が取り付けてあったのか分からなくなりますので、全体の画像を撮っておきます。

加えて、取り外したパーツ類はどの場所に取り付いていたかを確認する為に、一つ一つマスキングテープでとめて全てのパーツが元通りの場所に、元通りのビスで留めるように印を付けて保管しておきます。ビスを外した時にバカ穴になっていた所が有りましたので、そこは取り付け時に埋木をしてトルクを確保します。

本体を分解する前にダンパーの雑音のチェックをしました。こちらはダンパーロッドのクッションの経年劣化で隙間が空いた為にノイズが発生していましたので、最後にクッションを貼り替えます。

オリジナルのトーレックスを熱を加えながら少しずつ剥がし込んで行きます。平面の剥がしはそれ程気にならないですが、コーナーの折り込み方を確認する為に、端っこが破れない様に、後で型取りできるように丁寧に剥がします。

やっとトーレックスの剥がしが完了しました。この後ケースの木部の表面を均して下処理をしますので、新しいトーレックスを張り込むまでに、数日かかります。

剥がしたトーレックスから型取りします。

平面はともかく、角の折り曲げが一番厄介なのでその部分の型取りを慎重に行います。

張り込みの順番をシミュレーションしながら、型取りします。

最終的にはこの型取りで新しいトーレックスをカットして行きます。

2023.12.06なかなかまとまった時間が取れずにいましたが、年内のお戻しの予定でトーレックスの張替え作業を進めて行きます。トーレックスのカットと共に、本体ケースの外装木材の荒れている部分を木工用パテで埋めて、乾燥したらペーパーで研いで平面を出します。また、ケース全体をペーパーで研いで表面を滑らかに均します。

新しいトーレックスを元通りの寸法でカットして行きます。新しいトーレックスは黒では無くアイボリー系の色なので、汚れやシミが付かないように、作業は慎重に行わなければなりません。

先ずは鍵盤部両サイドのトーレックスを元通りのサイズにカットします。

カットしたトーレックスを左右の板に貼って行くのですが、一番先にコーナーを合わせてから貼り付けます。

2023.12.12鍵盤部のトーレックスの張り込みを行っています。

今週中に鍵盤部を終えて、来週はアンプ部の張り込みに入りたいと思います。何とか年内に完成させてお戻しが出来るよう作業を進めて参ります。

2023.12.15鍵盤部のトーレックス貼りが完了し、金具を取り付けました。穴の位置が分かるように事前にチェックしていたので、金具の取り付けはスムーズに行きました。

明日は、鍵盤ユニットを載せてセットします。その後スピーカー部の張替えに進みます。

2023.12.16アクション、鍵盤ユニットをセットしました。一度鍵盤が本体の手前に干渉する所が有りましたので、再度取り付け位置を調整して問題解決しました。

鍵盤もブッシングの貼り替えをした関係で、動きがシブくなっているものが有りましたが、穴コロシで調整してスムーズに動くようにしました。こちらは再度、最終調整時にもう一度動きを確認します。

続いてアンプ部のトーレックス張替えに入ります。こちらはアンプを外しての作業となりますが、アンプは配線がハンダ剥がれや断線等の二次災害を起こしやすいので、そのままの状態で保管場所に移します。

背面側のススピーカーは配線が外されていましたので、このままの状態にしておきます。

フロントのスピーカーネットを外す時に嫌な予感がしたのですが、案の定カバーの枠の部分を割ってしまいました。こちらはマジックテープで本体に取り付いているのですが、このマジックテープがやたらと強力で、おまけに枠のパーチクルボードは経年劣化して弱くなっているので、無事に取り外すのは至難の業です。こちらは当社在庫品に交換します。

今日は、古いトーレックスを剥がすまでの作業を終えました。

2023.12.22アンプの両サイドの張替えを終えましたが、裏側の接着が所々しっかりと貼られて無かったので、再度接着してクランプでとめました。接着は焦るとろくなことが無いので、時間をかけてしっかりと貼り込んで、乾燥させていきます。

2023.12.26アンプ部のトーレックス張替えで、折り返し側の接着剥がれが無い様に、クランプで固定して接着をしています。片側一方ずつ接着する為、時間がかかりますが、しっかりと接着させる為には時間がかかりますがこの方法が確実です。

乾燥時間を取るために1日1面と言った感じで貼り込んでいます。

何とか年内にトーレックスの張替え作業は終えられそうです。

2023.12.30アンプ部の金具やステー等を取り付けて行きます。

当初ペダルを踏むとノイズが発生する不具合が有りましたが、ペダル突き上げ棒の先端のアジャスターが基準の位置にセットされていなかった為と思われます。こちらは最終チェックで再度確認します。

背面のスピーカーネットは破れや破損が有ります。

一部破損していましたので接着しておきます。

接着と言っても接着剤を付けただけではダメなので、プライマーで固めてクランプで押さえておきます。

背面のスピーカーは当初外された状態でした。

こちらは当初と同じように外した状態にしておきます。

これでパーツの取り付けはほぼ終了で、残すはアンプのみとなります。

アンプは配線や基板を触ったりすると、断線やハンダ剝がれ等の思わぬトラブルを引き起こすので、台車に乗せたまま触らないように保管しておきました。

スピーカーケーブルを差し込んで、後はビス止めするだけです。

これでトーレックスの張替え作業は全て完了しましたが、これから鍵盤部をセットして最終動作確認となります。ただ工房が一杯でスペースが狭い為、つまらない二次災害が起きないように、年明けに他の楽器を整理してから動作確認をします。

2024.01.07鍵盤部とアンプ部をセットして音出しをしてみました。

特に問題は無さそうです。後は最終チェックとなります。

ビブラートをONにした時に、INTENSITYのツマミを回すとガリが出ていました。INTENSITYは放っておくと後で思いもよらないトラブルが起こる事があるので、こちらはケイグを浸潤させて調整しておきます。

2024.01.08プリアンプのカバーを外して内部をチェックしました。

INTENSITYボリュームのガリ除去のためにCAIGのD100Lを塗布した後にD5をスプレーします。D5は5%溶液の為、十分な効果が期待出来ない時が有るので、100%濃縮溶液のD100Lを先に使用してからスプレーして馴染ませます。ただこれも対処療法的な要素が有りますので、暫く時間を置いて再度ガリのチェックをして、またガリが出ている時は同じ作業を繰り返します。

この間、鍵盤の動きを確認いして、若干でも抵抗を感じた鍵盤はキープライヤーを使ってブッシングを締めて行きます。ここまでやっておけば鍵盤の動きは問題無いと思います。

念のためハープ調整をした高音部を再度チェックしてみると、何故かピックアップのワイヤーが浮いていました。前回ピックアップ交換したのはF#7でしたので、この場所はいじっていません。

取りあえずハンダで接続してみました。

接続した状態でピックアップをチェックした所、2個が飛んでいます。

改めてピックアップのワイヤーを外して動作チェックすると、なんと音が出ます。これは飛んでいたピックアップ2個をそのグループから外して、隣のピックアップで音を出させるようにしているのかも知れません。

ピックアップのワイヤリングを見ても、やはりここは5個が1グループとして接続するようになっていました。

2024.02.01お預かりしてから8カ月ほどかかりましたが、全ての作業を完了して出荷待ちとなりました。後は無事にオーナーさんの元に戻れるよう、梱包もしっかりと行いました。

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