ローズピアノ マーク5 修理 2023.01.19
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン

Rhodes Piano Mark 5の修理依頼を頂きました。
Mark5と言うモデルは生産台数も少なく、珍しいモデルです。
今回は、鍵盤を弾くと異音がすると言う事でお預かりしました。

カバーもグラスファイバー製でカッコ良いですね。

先ずは、カバーを外して中の確認をしながら音出しをしてみます。

確かに幾つかの鍵盤で、カタカタと言った異音がしています。
そこで、アクションやハンマーを見る為にハープ部を取り外してみました。

すると鍵盤の上に何かポロポロと落ちて来る物がありました。

よくよく見ると、フレームの金属部分の塗装の剥がれのようです。
これも後で綺麗にしましょう。
中音部を中心に高音部までの幾つかの鍵盤にカタカタと言った異音が発生していました。

Hammer Comb(ハンマーを取り付ける為のパーツ)の割れではないかと考えていましたが、そうではなさそうです。

鍵盤を外して、中を覗いてみました。
結構ホコリが溜まっています。

どうも鍵盤が落下した時のクッションの役割をしているバックレールクロスの経年劣化によるへたりではないかと思われます。
試しに小さいクッション材を入れてみたら、異音は治まりました。

そこで、一度本体をバラシて内部の様子を見る事にしました。

内部には結構な量のホコリが溜まっていますので、先ずはお掃除から始めます。

ゴミやホコリは放っておくといらぬ悪戯をするので、修理の基本はお掃除して綺麗な状態で始める事です。

バックレールクロスに厚さ1.2㎜のフェルトを貼り付けてみます。
もし、バックレールクロスが原因でなかったら、当初の異音が出るはずです。
バックレールクロスを剥がした後で原因が別にあったとなると、作業が二度手間となってしまいますので、
先ずは、このフェルトを貼り付けて症状が治まるかどうかを見ます。

部分、部分に両面テープを貼ってよじれないように注意します。
異音は消えました。
やはりバックレールクロスのへたりが原因だったようです。

しかし1.2㎜のフェルトを貼り付けると、鍵盤高がこれだけ下がってしまいます。
そうするとタッチ感やトーンジェネレーターの当たりが変わってしまいますので、
今と同じ厚さの新しいバックレールクロスを取り寄せて、張替える事にします。
この作業も以外と神経を使う大変な作業です。
ただ、バックレールクロスのへたりが原因でも、あのカチカチ音の発生源は別の所の可能性もあるので
もうしばらく原因追及をしてみます。

バックレールクロスを剥がして状態を確認してみましたが、見た目には大きなへたりや破れなどは確認出来ません。
そうすると、バックレールクロスに当たってカチカチ音が出ている訳ではなさそうです。

ただ、鍵盤の当たる場所に合わせて置いて見ると、カチカチと音のする鍵盤の当たりがややへこんでいます。
やはりバックレールクロスが何らかの原因になっているのは事実です。
そこで、この剥がしたバックレールクロスをアコースティックピアノのやり方で張り直してみました。
バックレールクロス自体の問題であれば、これで症状は改善するはずです。
やはり、完全には治っていません。鍵盤とどこが干渉しているのかが分からないと、適切な処置が出来ませんので、
時間をかけて、原因追及して行きます。
もう一度、バックレールクロスを全部剥がして打鍵すると、カチカチ音が増幅されました。
そこで、最低音の動きを見て、干渉する場所の特定を行いました。
すると、鍵盤とハンマーが当たっていました。
まさにこれが今回のカチカチ音の原因でした。

因みに、幾つかの鍵盤が削られていたのですが、どうもこの対策のようです。

再度バックレールクロスを貼り付けてみると、鍵盤とハンマーの間にちゃんとスペースが出来て当たりません。
再度全体にバックレールクロスを貼り付けてみたら、カチカチ音は治まりました。
さて、原因が分かった所で、どの様に修理して行くか思案のしどころです。
バックレールクロスの新品を探したところ、厚みと幅が違っていて、貼り付けた時に鍵盤がどの位持ち上がるか不明です。
また、新しく交換しても、時間と共に同じ症状が起こる可能性が高いです。
鍵盤の加工はこれはこれで厄介な作業となりますが、将来の事を考えたら鍵盤を加工した方が良いのではないかと思います。

新品のバックレールクロスを取り寄せてみましたが、やはり厚みが違うので使えませんでした。
そこで元のバックレールクロスを調整してもう一度貼り付ける大手術をしました。
結果的に鍵盤のタッチや音色も大きな変化無く、無事に取り付けられました。

2023.03.10 バックレールクロスを貼り直したので、鍵盤調整を行うため、特製の鍵盤定規で鍵盤の高さを測りました。

すると中央部がかなり下がっています。これはバックレールクロスだけの問題ではなさそうです。
中央部が下がる事で鍵盤とハンマーの干渉を招いた可能性も考えられます。
中央部がこれだけ下がるのは、本体が歪んだのか、キーベッドの反りなのか、正確な原因は分かりませんが
本体をバラす時に、一部のビスでルーズな物が有りました。
原因はともかく、先ずは鍵盤ならしをして高さを均一に揃える事にします。

白鍵の高さ調整を行いました。
これでタッチ感も向上するのではないかと思います。

黒鍵も同じように中央部がかなり下がっていましたので、高さ調整を行いました。
鍵盤ならしを行うと、ハンマーとタインの当たり具合、ダンパーの止音具合にバラつきが出ますので
ハープ調整及び音色調整も合わせて行って行きます。

鍵盤をセットする前にブッシングの状態を見る為に鍵盤を裏返しにしたら、
あら、まあ、かなりのホコリが溜まっていました。

このままにしておくと、将来湿気がからんでロクな事は起こらないので、全て綺麗にしました。
なお、フレームに付着していた塗料らしきものは、もしかするとノイズ対策の塗料の可能性もあるので
今回は剥離せずに、そのままにしておくことにしました。
一応、メンテナンス作業が一段落したので、暫く様子を見て、問題が無ければお戻しする事にします。

早速試弾して頂き、トラブルの解決と動作に問題の無い事を確認して頂き、一件落着となりました。
有難うございました。
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