ローズピアノ スーツケース マーク1修理 2024.07.01
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
2024.08.31都内のお客様よりお預かりしたRhodes Pianoの修理に取り掛かりました。先ずはセッティングして鍵盤を見ると、一つ戻らない鍵盤が有ります。
また、高音部のトーンジェネレーターには何故かティッシュ状の紙が挟まっています。何の為に行ったのか、これも後で要チェックです。
電源を入れようとパワーアンプを覗いて見ると、120V 60Hzの文字が見えます。100V仕様のものと117V仕様の物があるので、注意が必要です。120Vの表記があるものは、ステップアップトランスを使う必要があります。
まずは、鍵盤の状態を見ると、やはり中央部が下がっています。
黒鍵も同様に中央部が下がっていますので、鍵盤整調が必要です。
そこで音出しチェックをしようと思い、電源を繋いでスイッチをONにしましたが、全く音が出ません。
プリアンプは問題無く動作しており、アクセサリーからの出力は出ていましたので、アンプの何らかの故障と言う事になります。少々手間のかかる作業となりそうです。
2024.10.04修理が立て込んで中々見る事が出来ませんでしたが、やっと時間が取れたので再度状況確認を行いました。先ずはアンプを外して中の状態を見ます。
アンプの取り付けビスが半分位代用品のビスになっていました。以前どこかで開けたことが有るようです。二次災害が起こらなければ良いのですが。
スピーカー内部はそれなりの状態で、良くも無く悪くも無くと言った所でしょうか。
中の確認の為、基板を触った所、何故かグラグラします。よく見ると基盤を固定する為の基盤スペーサーが割れて、部品が欠損しています。基盤が固定出来ないのは故障やトラブルの原因になりますので、何か手立てを考える必要が有ります。
もう片方の基盤スペーサーも割れています。何故こうなったのかは分かりませんが、これではスピーカーを動かした時に基盤がブラブラと揺れて、接続コネクターの断線に繋がります。ちょっとこの先が思いやられる感がします。
電源スイッチは感触は良くありませんが、通電していました。
プリアンプから5ピンケーブルを介して、最初に接続されるのがPRE AMP OUTPUT端子です。こちらから外部アンプに繋いでみたら、ちゃんと発音しました。するとやはり音が出ない原因は電源回路から内部基板の不具合となります。全く音が出ない事を考えると、電源基盤が一番怪しくなります。
2024.10.05元々のアンプの内部状況を見たら、基板の固定が出来ないのと電源回路が故障していること等を考えて、アンプの交換をする事にしました。そこで当社に有る在庫のアンプを繋いでみたら、しっかりと発音しました。
ただどうも音色がノイジーです。何が原因なのかこれから一仕事となります。
先ずは基盤を外して眺めてみると、トランジスターが変わっています。
基盤を裏返して見ると、抵抗が焼けた跡があります。これはトランジスターがショートして抵抗が焼けたのでしょう。多分その修理の為にアンプを開けたのだと思います。
ここでまず、各端子の再ハンダをしておきました。接点不良はノイズの原因となりますので、両方の基盤の再ハンダを行っておきました。
続いて、コネククター部の洗浄と接点磨きを行っておきました。
グラスファイバーヤスリを使って、接点を磨いておきました。この状態で組付けてみましたが、あまり改善しません。ちょっと長丁場になりそうです。
2024.11.23前回の投稿から、色々と試行錯誤しながら作業を続けていましたが、ノイジーな音色の原因がつかめずにいました。
結局アンプを交換して、中の基盤を元の物を取り付けると言う作業で、何とかノイズの問題は解消されました。交換したアンプは100V仕様なので、ステップアップトランスを使う必要は有りません。
こう言ったトラブルは複合的な原因による事が多いので、作業するほうも工程が複雑になって混乱します。全ての状況を紙に書いて、整理しながら進める事が必要です。
その上で、トーンジェネレーターに詰めて有ったティッシュペーパーを取り外して様子を見ました。
一つ音が止まらないKEYが有りましたが、こちらは中を確認してみると、ダンパーフェルトが欠損していました。こちらは後でダンパーフェルトを取り付けます。
鍵盤を外して中を確認すると、鍵盤のブロックは四角い初期タイプの物でした。やや鍵盤が重くなる傾向が有りますが、このタイプはフェルトがハンマーの下に付いているので、改造は出来ない事は無いですが、ちょっと大変です。
ハープを上げる時に、何かバランスが悪く、危なかったので、原因を探ってみたら、低音部側のガイドビスが外されて欠損していました。こちらはハープを持ち上げる時のガイドになると同時に、本体に組付ける時の位置出しの役目も有るので、ここのビスが無いのはいずれにしても良い事は有りません。後で取り付けておきます。
2024.12.02調律とハープ調整、ボイシング調整を行う前に、鍵盤を全て外して内部のお掃除と点検を行いました。
目的の一つは、バランスピンとフロントピンのサビの発生状況の確認と、二つ目はバランスパンチングを本来の形に戻すことです。
バランスパンチングは鍵盤の高さを揃える為に、何種類かの紙パンチングを使いますが、Rhodes Pianoの場合は製造時に紙パンチングを上にしたままで出荷しています。本来は布パンチングを一番上面に持って来ないと、鍵盤を外す時に紙パンチングがくっついて来て、どこかに無くしてしまう事があります。それを防ぐ為に、本来の状態にします。
また、内部のお掃除をすると、必ず何か異物が入っています。
こちらのRhodes Pianoにも、ギターのピックやビス、おもちゃの50円が入っていました。こんな異物が鍵盤の隙間に入り込んで、鍵盤が戻らなくなる不具合や、ハンマーの下に潜り込んで鍵盤が下がらないと言ったトラブルを起こす事があるので、お掃除は大事な作業です。
また、鍵盤を外してブッシングクロスの減りや剥がれが無いかをチェックする事も、大事な作業です。
バランス側と共にフロントのブッシングクロスもチェックしておきます。
今回はアンプの修理の他に、将来的にトラブルが発生しないようプリアンプのボリューム等も接触不良を防ぐ為に、Caigを塗布しておきました。
その上で、調律作業に入りましたが、高音部のB♭の音量が小さいので、ピックアップを確認したら、ピックアップが飛んでいました。こちらは要交換です。高音部はピックアップが飛んで断線しても、隣のピックアップが音を拾って出力は低いですが音が出て来ます。今回調律をしている中で気付きました。
2024.12.03最終調律をする為、プリアンプを取り付け、その後アンプをセットしようとしたら、何故かアンプが入らないと言うトラブルが発生。何が当たっているのか分からなかったので、背面のスピーカーパネルを外して中の様子を見てみました。
するとペダルの下の隙間に乾電池が入り込んでいました。丁度くぼんだ所にスッポリトはまり込んでいたので、トラブルにはなりませんでしたが、取り除いておきました。また、ケース内のお掃除も一緒に行っておきました。
何とかかんとかアンプをセットしてビス止めしました。これで調律まで進めると思ってスイッチをONにすると、なんと片チャンネルにノイズが乗って来ています。
アンプを取り付ける前はノイズは発生していなかったので、再度アンプを取り外して再チェックと修理をやる事になりました。
再度アンプを外した状態で、動作確認を行った所、ノイズは消えていました。しかし、ノイズが発生していたことは事実なので、何らかの原因があるはずです。ただ、ノイズが発生していないと原因究明も難しいので、とりあえず配線関係の接触不良等が無いかチェックしました。
その後、調律を行いましたが、タッチにバラつきがありましたので、トーンジェネレーターの取り付け位置を確認すると、殆どのトーンジェネレーターの手前側のビスが低くセットされていました。そこで、全てのトーンジェネレーターの位置を基準値に戻す為、1から調整しました。
全てのトーンジェネレーターを調整後、ボイシング調整も行い、全体の発音バランスが整いました。この時点で、ノイズは発生していません。
2024.12.04最終のボイシング調整と調律の微調整を行い、全ての作業が完了しました。
アンプの取り付け時のノイズの発生原因がつかめないままですので、一分の不安が残ります。とりあえず、もう一度基板の状況を確認する為、このまま電源を入れた状態で、エイジングをかけます。
2024.12.10これまでほぼ毎日電源を入れて、動作チェックを続けていましたが、ノイズも発生せず、動作に問題は有りません。ただ、ダンパーペダルを踏む時が、鍵盤部とアンプの位置がズレるようで、裏返しにして確認した所GLIDEが1個欠損していました。また、他の3つのGLIDEもネジがバカになっていましたので、全てに埋木をしました。
その上で、全部のGLIDEを固定して、ダンパーペダルも問題無く動作するようになりました。
ノイズの発生が心配でしたが、とりあえず現状で問題発生が無いので、これで一度修理を完了致します。
2024.12.20無事にお客様の元にお戻し出来ました。今後、トラブルが発生しない事を願います。有難うございました。