Wurlitzer 200A Maintenance 2023.03.31

ウーリッツアーピアノ200A 修理 2023.03.31

この記事の事についてのお問い合わせは、
℡ 0120-045-845 
または bzq21747@gmail.comにメールで問い合わせてください。
ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

ウーリッツアーピアノ200Aの修理依頼を頂きました。

症状はAUX OUTからのノイズと言う事で、早速本体の動作状況を確認しました。

本体のスピーカー並びにヘッドフォーンからは取りあえず問題無く音が出ています。

しかし、AUX端子からアンプに繋いだら、確かにブーンノイズで鍵盤の音は聞き取れません。

本体をバラシて内部を確認しましたが接触不良等が原因ではなさそうです。

暫くは原因究明のために、色々と下調べして行きます。

2023.04.03確かにAUXOUTのみノイズが発生していたので、本体を分解して、AUX端子の配線回りを見てみました。

すると、AUX端子の部品が交換して有るようです。いつ、どこで何故交換したのかは不明ですが、何らかの不具合があったのでしょう。

配線関係をいじってみましたが、接触不良やショート等の不具合はなさそうです。

Wurlitzerのサイトからサービスマニュアルをダウンロードして、配線図を確認してみました。

どうも配線が図面と違っているようです。正確な事はまだ分かりませんが、何が起こっているのか調べて行きます。

2023.04.28 回路図やデータが存在しないか探してみましたが、有力な資料は見当たりません。これは根を据えて一から見て行くしかないようです。先ずはノイズがどこで乗っかっているのかをシグナルチェッカーを使って調べてみました。このシグナルチェッカーも40年前の物で使えるかどうか心配でしたが、何とか信号を追う事が出来ました。

アンプ、プリアンプの不具合も可能性として排除された訳では有りませんが、再度ノイズの発生の状況を確認した所、以下の状態である事が分かりました。

  1. AUX端子からだけノイズが発生している。
  2. 打鍵してもAUX端子からピアノ音は全く出ない。
  3. 電源をON-OFFしても常時ノイズが乗ってる。
  4. 本体のボリュームは効かない。
  5. 電源プラグを抜くとノイズが治まる。

AUX端子からの配線はこちらのボリュームポッドに接続されていますので、この辺りの配線に問題があるのかとも考えられます。

試しにボリュームポッドとAUX端子を接続してみました。するとちゃんと音が出ます。

ボリュームポッドの配線をチェックしてみたら、何故か切断されたコードが有りました。

多分これが原因なのではないかと思い、AUX端子にコードを繋げてみました。するとAUX端子から音が出ます。これで一件落着と思いきや、何故配線をカットしたのか、疑問が湧いてきました。他に何か原因があったのではないか・・・

取りあえず、全てのパーツを元通りに取り付けて発音チェックしました。AUXからの音は問題有りません。しかし、ヘッドフォーンを差し込んで発音した所、ディストーションがかかったように音が割れていて、音量も上がりません。スピーカーも接続してみましたが、ヘッドフォーンと同じ症状です。やはり、何か不具合が有って、使用頻度の少ないAUXをつぶしたのだと思います。さて、これからまた長い道のりが続きそうです。

2023.06.24この間資料を探したり別にアンプが無いか探してみましたが、有力な手掛かりはつかめませんでした。そこで、今回助っ人に入ってもらって、再度スタートラインに戻って、多分修理したであろう箇所をチェックすることにしました。つまり、なんらかの不具合があって、AUX端子を交換し、ボリュームポッドの配線をカットしたと思われる最初の原因が何であったのかを探る事にしました。

まずはカットされていたボリュームポッドとAUX端子を繋いでいたであろうラインを、再度容量の大きいシールドでつないでみました。するとAUX端子からは音が出るようになりますが、スピーカーとヘッドフォン端子からの音はディストーションがかかったようなノイジーな音が出ます。

このノイジーな音の原因が何なのかを探るために、今度はアンプの信号を追って行きました。先ず音源側からノイズがどこで発生しているのかを追って行きますが、ただこれもノイズが確認された所の部品が原因なのかどうかは分かりません。複合的に部品が劣化している可能性も有るからです。この段階で疑われたのがヒューズの配線でした。管ヒューズにワイヤーが直付けされており、このワイヤーの容量不足という事も有るので、このワイヤーを交換しました。

半田不良や基盤内の接触不良もいくつか有りましたので、それも修理しました。アンプ内の大まかな不具合を修理してみたところ、スピーカーからもAUX端子からも音が出るようになりました。しかし、今度はスピーカーの音に最初とは違うノイズが乗るようになりました。ビブラートをかけると、ノイズが一層ひどくなります。どうもこれが一番初期の状態ではないのだろうかと考えられます。このノイズを消すために、いろいろと部品を交換したり対策を行ってみたけれど、どうも改善しない。その為やむを得ずAUX端子をつぶして、スピーカーとヘッドフォン端子を生かしたのではないだろうか?ただ、まだまだ推理段階ですが、そうなると今度はアンプの部品が原因という事になります。次は怪しい部品を交換するためにパーツを発注しますので、また暫く時間が空きます。

2023.07.08ノイズの発生源となりうるパーツの交換をする事にしました。

先ずはプリアンプを外して、アンプからのノイズが有るかどうかを確認しました。少しですがノイズが残っています。

関連性の有るコンデンサーをいくつか交換してみましたが、ノイズの量はあまり変わりませんでした。

しかしコンデンサーは古くなると悪さをするので、可能性の有る所は交換しました。

電源コンデンサーも念のため容量の大きいものに交換しました。

最終的に劣化していそうなパーツと配線を新しい物に交換して、動作確認を行った所やっと問題なくスピーカーからも、AUX端子からも発音するようになりました。当初のAUX端子からのノイズは配線の劣化と断線が原因だったようで、その前の本体スピーカーからの音割れは部品劣化とシールド不足が原因だったのではないかと思われます。この状態で暫くエイジングで様子を見てから最終調整に入ります。

各パーツを取り付けると共に、各スクリューの増し締めとワイヤー類をまとめてタイラップで固定する作業を行いました。この頃のヴィンテージ楽器は、スクリューの緩みや配線の遊びなどでもノイズが発生する事が有るので注意しなくてはなりません。

また、ボリュームポッドのスプリングが一つ欠損していて、ボリュームポッドがしっかりと取り付けられなかったので、内部にプラ素材でスプリングの代わりになるパーツを作って、何とか問題無く動作するようになりました。明日お客様が引き取りにお越しになるので、それまで最後の点検とエイジングで様子を見ます。

2023.07.10ご依頼主のお客様がお越しになり、動作点検をして頂いたところ、修理前にはなかったノイズが発生しているとの事で、再度そちらの修理メンテナンスを承る事になりました。お預かりした時の状況からすると、このノイズを消す為にAUX端子を潰したのかとも考えられます。改めて対応させて頂きます。

エイジングを兼ねて長時間電源を入れた状態で様子を見ました。するとノイズが出る時と出ない時が有り、原因が中々特定出来ません。そこで考えられる原因と部品を洗い出してみました。

その原因の一番に考えられるのが、プリアンプの初段のコンデンサーで、ここでノイズを拾う事が多いので先ずはこの部品を交換しました。部品の交換に当たってはコンデンサーの容量と耐電圧をしっかりと調べて適合する部品を調達しました。

その他、ハンダ不良や配線からのノイズ対策も施してみました。

お客様からのご希望はスピーカーやヘッドフォーンを犠牲にしても、AUXOUTを正常にして欲しいと言う事でした。しかしやってみると全体を調整して行かなければどちらも正常に機能しません。配線回りやアースの取り回し等、細かい所もしっかりと見て、何とか満足の行くレベルまで戻せたのではないかと思います。

2023.07.28お客様にご来店頂き、再度試弾して頂きました。当初のノイズレベルと比較して頂いたあと、設置場所を変えてノイズレベルの変化を確認して頂きました。その上で何とかOKを頂き、お戻しの手配となりました。

ビンテージ楽器の修理は終わりが見えない部分が有り、これが一番厄介になります。修理そのものに割く時間より下調べやデータ収集等の準備にかかる時間がとてつもなく大きくなるのでコストの算出が難しいです。大手の楽器店等ではコスト割れして対応出来ないのでしょう。都内の某有名楽器店もビンテージ楽器の取り扱いをやめてしまいました。理由が何となく分かる気がします。

しかし、当社は出来る限りの対応をして行くつもりで、色々と対策も講じています。パーフェクトは出来なくとも、パーフェクトを目指して進んで行きたいと思います。

エレピの部屋はこちら

上部へスクロール