YAMAHA CP70B Maintenance 2023.01.27

ヤマハ エレクトリックグランドピアノ CP70B メンテナンス 2023.01.27

この記事の事についてのお問い合わせは、
℡ 0120-045-845 
または bzq21747@gmail.comにメールで問い合わせてください。
ピアノ職人・VIRA JAPAN 
(有)ラッキーパイン

2023.01.27 栃木県のお客様より、ヤマハCP70Bのメンテナンス依頼を頂きました。

取りあえず、本体をお預かりして、内部のチェックを行いました。

全体的に綺麗な個体で、一見問題はなさそうです。

お客様からは調律と必要な調整を頼まれましたので、先ずはピッチを調べました。

A=440でしたが、高音部はかなり下がっていました。

また、低音部はピッチのバラつきが大きく、調律は何回かやらないと落ち着かないようです。

次に鍵盤とアクションを取り外して内部をチェックしました。

棚板はホコリも少なく、割ときれいな状態でした。

外した鍵盤を見ると、スプーンにサビが浮いていて、タッチの抵抗になりそうです。

スプーンはアップライトピアノで使うパーツですが、CPはUPと同様にダンパーを動作させる為に使っています。

また、ダンパーボタンもサビが発生しているようで、かなりの数が戻らない状態です。

通常グランドピアノのダンパーを作動させる為のパーツはダンパーレバーですが、

CPはアップライトピアノで使用するキャプスタンを使ってダンパーを動作させます。

その為、便宜上ダンパーボタンと呼んでいますが、正式な名称は分かりません。

この状態でも演奏時にはダンパーの重みで定位置に下がりますが、抵抗で鍵盤タッチにバラつきを感じると思います。

ダンパーロッド等にもサビが浮いていますので、サビ落としや調整をしたほうが良いと思われます。

バランスピンにもサビが発生していて、多分このままでは鍵盤抵抗が増して、弾きにくくなるでしょう。

フロントピンもサビの発生がありますので、両方のメンテナンスをお勧めします。

最初にアンプにつないでチェックした時に、途中からノイズが発生しました。

接触不良だと思い、フォーンプラグを抜いてジャックをチェックした所、ビスがあまくなっていました。

裏側を確認すると、ジャックの受け側があっちの方を向いていましたので、こちらは調整が必要です。

その他、プリアンプのボリュームポッドにサビが発生していました。

また、ガリも出ていましたので、こちらも要メンテナンスです。

お客様から修理内容についてのお電話を頂き、その中でピックアップが黒く変色している箇所が有る事を告げられました。

直ぐにその個所を調べた所、何かこぼした跡のようでした。

早速、ピックアップ部をグラスウールのブラシを使ってクリーニングしました。

高音部のフレームにも、かなり広範囲にこぼれた跡が残っていました。

よくよく見ると、どうもコーヒーをこぼしたのではないかと思われるシミでした。

最初本体を見た時に、鍵盤のケースの奥にシミがあるのは気づいていましたが、

ピックアップや弦等に付着したものは、全体の作業の中でクリーニングを行って行きます。

2023.02.11  取りあえず時間が取れる時に、出来る事から始めました。

先ずは、改めてピックアップに付いたコーヒーと思われるシミの除去作業を行いました。

弦やピックアップは洗剤や液体等は使えない為、グラスウールのブラシを使って汚れを落とします。

洗剤を使える所は湯せんした洗剤を使ってみましたが、中々汚れは落ちません。

かと言ってグラスウールのブラシで擦ると鉄骨の塗装も剝げ落ちてしまいますので、

加減しながらの作業となります。

鍵盤側の汚れは洗剤を使って落としました。

スプーン研磨前

次にスプーン研磨を行いました。

このスプーンはダンパーを開放する時に、ダンパーボタンを押し上げる為のパーツです。

今回はダンパーボタンの調整と共にスプーンを磨き上げます。

スプーン研磨後

スプーンを研磨して、シリコン剤で防錆処理をしました。

少しでも抵抗が減れば、タッチがスムーズになり、弾きやすくなります。

続いてバランスピンのサビ落としと磨き上げ作業です。

鍵盤とバランスピンは、ピンの根元が一番接触する場所なので、パンチングを全て外して磨き込みます。

専用工具も有るのですが、やはり指先の抵抗を感じながら磨き込みする方が、ピンの感触が伝わって来て状態を感じ取りやすいです。

この時にパンチングの場所を間違えないように、専用に作ったパンチング置きに順番にさしておきます。

パンチングを間違えると、鍵盤の高さが違ってしまい、後々面倒な事になるので、間違えないようにしてます。

ピンのサビや汚れは、場所によってバラバラなので、一本一本指先の感触を確かめながら研磨して行きます。

初めに0000番のスチールウールでサビや汚れを落としてから、金属クリーナーで磨き上げて、最後はシリコン剤で防錆処理をします。

こうする事で、鍵盤抵抗が大きく改善されてタッチ感が断然アップします。

時間と労力の掛かる作業ですが、丁寧にやって行く事で弾き味に大きな差が出ます。

残念ながら、今日はここでタイムアウト。

次は明日以降に持ち越しです。

フロントピンの磨き込みに入りました。

こちらもブッシングを外して、しっかりと磨き上げて行きます。

フロントピンはサビの発生もそれ程で無く、順調に作業が進みました。

折角なので、ダンパーロッドも取り外して研磨処理しました。

タッチにそれ程影響が出る訳では有りませんが、やはり磨かれて綺麗になっていると嬉しくなります。

また、ダンパーペダルを踏んだ時に、汚れやサビが有ると、異音の発生原因にもなりますので、

ジョイント部はスチールウールで磨いた後、シリコン剤を塗布しておきました。

これで、キーキー音やギーギーと言ったノイズの発生は防げます。

次にダンパーボタンのサビ落としに入りましたが、通常の方法では滑りが改善されません。

このパーツの呼び名が何というのか分かりませんが、アップライトピアノの場合はポストワイヤーと言う部品に当たります。

ダンパーボタンを作動させるガイドを外してみると、今までに見たこともない位のサビが発生していました。

これではダンパーの動きが悪くなり、このまま使っていたらポストワイヤーのガイドのブッシングが削れて

ガタツキが出たり、最悪の場合はポストワイヤーが引っ掛かって鍵盤が戻らなくなる可能性も有ります。

本来、このレベルはパーツ交換となりますが、パーツが無いので一つ一つサビ落としと防錆処理を行って行きます。

73KEY 全てを行うので、これは一日作業になりそうです。

朝から始めて、予定では鍵盤整調まで行きたかったのですが、さすがに無理でした。

これだけサビが出ているのは珍しく、やはり1日作業となってしまいました。

抵抗なく、ストンストンと戻るようになりました。

ここまでやっておけば、問題無いでしょう。

2023.02.14 今日は昨日出来なかった鍵盤調整を午前中一杯おこないました。

鍵盤の穴コロシの調整は丁寧にやるとタッチ感が大きく違って来ます。

特に今回はピンやポストワイヤー等の周辺パーツも全てメンテナンスしたので、格段の違いとなりました。

アクションも乗せて、各部の動作チェックを行います。

ストリングス部をセットして、各種動作チェック

一部びり付きが有りましたが、本体のキャッチパーツでしたので、直ぐに無くなりました。

この状態で2日程シーズニングしてから、最終調整に入ります。

電気回路のチェックです。

ボリュームにガリが出ていましたので、接点復活剤を使って修理します。

接点復活剤をやりすぎると、別の不具合が出て来ますので、パネルは外して作業します。

全てのボリュームポッドにDEOXITを少量塗布して、ガリを取り除きました。

パネルを取り付けて、調整作業の合間に一度調律をしました。

A=440でピッチを合わせます。

その後、鍵盤押さえやトップカバーを取り付けました。

もう少しで、完成出来そうです。

しばらく通電してトラブルが発生しないか様子を見ます。

最終チェックでダンパーを取り付けて動作確認をした所、作業前には気づかなかった

「キュッ、キュッ」と言うノイズが聞こえました。

このままでは出荷出来ませんので、再度本体を分解してダンパー部品を外して確認してみました。

案の定、ダンパーの天秤用のヒンジ棒にサビが発生していて、これが悪さをしていました。

サビを綺麗に落として、研磨処理とプロテックプロルーブを塗布して滑りをよくしました。

こちらは一件落着です。

最後の最後にカバーを閉めようとしたところ、ヒンジが中々入りません。

よくよく見ると、ヒンジがへし曲げられていました。

また、こちらのヒンジは3か所で止められていますが、ヒンジが曲がってしまうと

差し込むのが大変になり、もっとヒンジを傷めてしまします。

その為ヒンジの曲がりを調整して、2か所で止めるようにしました。

2023.03.09栃木県のお宅へ無事お戻ししました。有難うございました。

エレピの部屋はこちら

上部へスクロール