ヤマハ YC-10 鍵盤接点雑音修理 2023.07.30
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ピアノ職人・VIRA JAPAN
(有)ラッキーパイン
2023.07.19YAMAHA YC-10の修理依頼を頂きました。YC-10は1969年にヤマハから発売された、ライブ用コンボオルガンで、製造から既に50年以上が経っています。
今回はこの動画の様に、鍵盤を押すとノイズが入ると言う症状の修理依頼でした。この時代のヤマハコンボオルガンはほぼエレクトーンと同じパーツを使用しているので、直ぐに金属接点不良と察しが付きました。しかし通常の経年劣化によるノイズの出方とちょっと違います。鍵盤を左右に揺するとノイズが多くなると言うのはエレクトーンの時には有りませんでした。50年と言う時間の経過がこのような症状を起こすのかとも考えられます。
早速内部を確認する為にビスを外しましたが、やはり作りも当時のエレクトーンとほぼ同じでした。
カバーのビス、鍵盤のビスを外してみると、鍵盤のビスの台座ワッシャーが一つ無くなっていました。これは以前どこかでこのビスを外して何かしらの調整をしていると言う事が予想されます。50年以上経過している、いわゆるビンテージ楽器は慎重に扱わないと何が起こるか分からない怖さが有ります。一つのパーツを外す時も、慎重に状態を確認しながら作業を進めて行きます。
鍵盤を上げると、やはり金属接点でした。エレクトーンの場合は16ftの音のみ金属接点で、8ftや4ftはゴム接点を使っていました。金属接点はどうしてもノイズが発生しやすいのでそのような仕様になっていたのだと思います。
しかしこちらのYC-10は全部金属接点で、おまけに多重接点でその隙間が狭いようです。
もう40年以上前になりますが、ヤマハのエレクトーン修理の時に使っていた接点磨き棒なる工具を取っておいて良かったです。今となっては何処にも有りませんので、手に入れる事が出来ません。しかし、ここで一つ問題が発生しました。それぞれの接点間の隙間が狭い為、このままでは使えません。その為、2本あるうちの1本をYC-10専用の工具として使えるよう加工する事にしました。
接点の状態を確認する為に、接点部分を覆っているカバーを外してみると、「ん?」何か違和感が!
よく見ると、カバーの奥側取り付け部分に何かが付着しています。通常このカバーはホコリが集らないようにするのですが、何故か液体状の付着物が有ります。そこでピーンと来たのは、鍵盤ノイズの修理の為に接点復活剤を使ったのだろうと言う事です。接点復活剤を使うのは、その時は良いのですが長期的に見ると弊害が発生します。これはちょっと厄介な修理になりそうです。
2023.08.02作業を開始しました。先ずは付着している接点復活剤と汚れの除去作業から始めます。しかし、何を使ったら良いか色々と頭を使って材料と工具を考えて行きます。
接点のクリーニングは専用の工具が無いので、先細ピンセットにキムワイプを巻いて、マスキングテープで固定して行いました。この時に無理に接点の隙間にピンセットを押し込んでしまうと、接点が曲がったり、最悪の場合は折れてしまったりする事があるので慎重に汚れを落として行きます。
接点の1ブロックをクリーニングしただけでこれだけ汚れが落ちました。この作業を16ft、8ft、4ftそれぞれの鍵盤接点で行います。
その後いよいよ接点磨き棒を使って、接点を磨いて行きます。一音一音鍵盤のタッチを指で感じながら、接点の接触を確認して調整して行きます。
鍵盤接点は一番手前が16ft、その奥が8ft、その奥が4ftでした。
一番奥は接点磨き棒が入りずらく、磨くのが難しかったですが、全て磨き上げておきました。
1日エイジングで置いてから、感度の低い所を再調整しました。こう言った修理はその時は問題無くても、時間が経過すると症状が出て来ることが有りますので、出来るだけ時間をかけて何度もチェックする事が大事です。この作業が出張修理では出来ないので、やはりお預かりして修理する意味があるようです。
2023.08.07無事にメンテナンスを終えてオーナー様の元に戻りました。8月9日にこのYC-10を使ってレコ―ディングをされるそうで、なんとか間に合いました。有難うございました。